国内3大コーヒーチェーンのスターバックス、ドトール、タリーズ。このなかでも、高いブランド力と顧客満足度を誇り、カフェ業界のシェアトップをひた走ってきたのがスタバだ。
しかし、ここにきてスタバ人気に陰りが見え始めた。例えば、2015年度「日本版顧客満足度指数(JCSI)」では、カフェ分野で顧客満足度1位となったのはドトールで、前年度トップだったスタバは僅差ながら3位に陥落している。
さらに、調査ニュースサイト「しらべぇ」が今年3月に全国の20~60代の男女1331人を対象に行った「大手コーヒーチェーン3社の中で好きなのはどれか」という調査でも、同様の結果が出ている。全体こそスタバが57.2%、2位のドトールが30.7%とスタバの圧勝だが、対象を東京都民に限るとドトールが44.7%でトップに輝き、スタバは40.7%の2位。東京では、人気面でドトールに逆転されてしまっているのだ。
カフェ業界でひとり勝ちしてきたスタバに、何が起きているのだろうか。スタバ失速の原因について、社会学者の新雅史氏に聞いた。
店舗が増えすぎて付加価値を失ったスタバ
「かつて、スタバはアルバイトの採用条件が厳しく、特にオープニングスタッフの倍率がとんでもなく高くて有名でした。応募者のコミュニケーション能力はもちろんのこと、ルックス面も評価基準だったと噂されるほどです。ただし、それは10年以上前の話にすぎません。店舗数が増えた現在、スタバの価値は明らかに下降しています」(新氏)
1996年に東京・銀座に1号店をオープンして以来、スタバは全国に店舗を展開し、今や店舗数は1100以上、都内だけでも300店近くある。また、スタバのバイトは独自の人材教育プログラムによって東京ディズニーランドのようなレベルの高いホスピタリティを提供するほか、離職率が低く、大学生の間で人気のバイトとして有名だった。
しかし、店舗数が増えて「選ばれた人のみが働ける店」から「誰でも働ける店」になれば、スタバの付加価値も薄まる。さらに、店舗数の拡大に伴ってバイトが増えたことで、自慢のホスピタリティの質も明らかに落ちているという。
「この店でなければダメという理由が、現在のスタバにはないのです。例えば、かつてスタバは電源コンセントやWi-Fiを完備することで、ノマドワーカーの取り込みに成功しました。成人男性の喫煙率がまだ50%以上だった時代に、カフェとして初めて全面禁煙に踏み切ったのもスタバです。
ところが、今やドトールもタリーズも禁煙・分煙を徹底し、店内も明るくなり、充電もできます。スタバとそれ以外のコーヒーチェーンに大きな違いがないのなら、メニューの価格が高く、いつ行っても混んでいるスタバより、ドトールやタリーズに行こうという気持ちになるのも当然でしょう」(同)