日産自動車が、系列の解体に乗り出している。日産は、系列最大のサプライヤーであるカルソニックカンセイの保有全株式を、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却することで合意、カルソニックカンセイは日産系列から外れることになった。背景には、自動運転やコネクテッドカーなど、自動車を取り巻く環境の変化がある。
自動車メーカーを頂点とするピラミッド構造、系列取引の解体に最初に着手したのは、多額の有利子負債を抱え込み倒産の危機に瀕していた日産の経営を再建するため、1999年にルノーから送り込まれたカルロス・ゴーン氏だった。当時の日系自動車メーカーは、新車の設計段階から系列サプライヤーが入り込み、無理な原価低減などにも協力してもらう一方で、系列サプライヤーからの調達を優遇していた。自動車メーカーはサプライヤーの一定の株式を保有し、役員も送り込み、両者は強い絆で結びついていた。
系列は、グループ力を結集することによる競争力強化となって自動車メーカーの強みとなるケースもあったが、「取引関係がなあなあとなるマイナス面」も否定できない。
この自動車メーカーとサプライヤーの関係に楔を打ち込んだのがゴーン氏だ。部品の調達は原則、品質・コスト・供給体制で選別するとともに、保有していたサプライヤーの株式を放出した。ただ、「日産にとって最も重要なサプライヤー4社の株式は保有し続ける」(ゴーン氏)としており、このうちの1社がカルソニックカンセイと見られていた。
カルソニックカンセイは、熱交換器や排気部品、計器類などを開発・製造するサプライヤー。最大の特徴は日産車向けにコックピットモジュールと呼ばれる運転席周辺の部品群(モジュール)を供給していることだ。日産の工場内にサブラインを設けて、日産車の生産ラインにコックピットモジュールを供給するほど、その関係は近く、カルソニックカンセイの売上高全体の約8割が日産向けだ。
日産は今回、KKRにカルソニックカンセイの株式を売却することで合意した。来年2月にKKRが実施する株式公開買い付けに伴い、保有する全株式の約41%を売却する。売却額は約2000億円となる見通し。