背景に環境の変化
日産が再び系列の見直しに動き出したのは、今回のカルソニックカンセイの件が最初ではない。今夏には系列サプライヤーの鬼怒川ゴム工業の保有株式(全体の約20%)を、日本政策投資銀行が実施した株式公開買い付けに伴い売却した。
こうした日産の動きの背景には、前述のとおり自動車業界を取り巻く環境の変化がある。自動車の競争力の軸が今後、自動運転や、インターネットに自動車が常時接続するコネクテッドカーに移っていく。欧州のメガサプライヤーであるコンチネンタルやボッシュなどは、すでに自動運転関連技術などを持つ企業を相次いで買収、自動車産業における存在感を増している。日産としては本来、カルソニックカンセイにも欧州メガサプライヤーに並ぶ競争力を求めていたが、日産向け事業が大半の状況では困難だ。
また、自動運転車で、手動運転と自動運転を切り替えるために運転手の運転状態を監視するドライバーモニタリングシステムも重要になってくる。日産はカルソニックカンセイを系列に抱えることで、調達において同社を優先し、結果的に日産車の競争力が劣るリスクも出てくる。今回、日産はカルソニックカンセイとの資本提携を解消、系列から放出することで、同社に他社とのM&A(合併・買収)などを通じた競争力強化を促す狙いもある。同時に、日産としても自動運転やコネクテッドカーで先行する欧州メガサプライヤーなどとの取引を拡大しやすくなる。
実際に日産は今年9月、コネクテッドカーの開発を加速するため、仏ソフトウェア会社のシルフェオを買収。投資先を既存の自動車部品から電子・電機やソフトウェアに転換する方針なのは明白だ。ただ、これら中核の部品メーカーとの関係解消は、日産車の収益力を低下させるリスクもある。日産、部品メーカーとも今後、新時代の関係づくりに向けて大きな試練を迎えることになりそうだ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)