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高橋篤史「経済禁忌録」

日本企業を脅かす村上ファンドOB、想定外の苦戦相次ぐ…リコーや第一生命も買い占め

文=高橋篤史/ジャーナリスト
日本企業を脅かす村上ファンドOB、想定外の苦戦相次ぐ…リコーや第一生命も買い占めの画像1「Thinkstock」より

 買い占め側からすると、まるで「焦土作戦」に遭った気分かもしれない。
 
 1月10日、シンガポールに拠点を置く投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」は自動車部品メーカー、ユーシンの株式5.0%を取得したとして関東財務局に大量保有報告書を提出。その日の16時32分、電子開示システムのEDINETにおいて情報は公に開示された。

 買い占め株数は多くなく、投資額も5億円余りと、百戦錬磨のエフィッシモにすればそれほど重要な投資案件というわけではないが、注目すべきは同時に昨年12月22日付で会社側に株主提案を突き付けていたことも公表した点だ。田邊耕二会長兼社長(当時)の高額な取締役報酬をやり玉にあげ、次の株主総会で2億円以下への削減を決議するよう求めたのである。言ってみれば宣戦布告だ。

 高坂卓志氏ら村上ファンドの若手出身者3人が2006年6月に立ち上げたエフィッシモはここ数年、日本企業から最も恐れられている“物言う株主”といっていいだろう。その手法は村上ファンドを踏襲するもの。コーポレート・ガバナンス(企業統治)で問題を抱えている割安な中小型株に狙いを定め、株式を買い占めるや公然と会社側への批判を開始、自己株買いなどに追い込んで高値売り抜けを図るというものだ。

 ただ攻撃方法は微妙に異なる。村上ファンドは村上世彰代表(当時)がマスコミ相手にまくし立てるポジショントークによって、世論形成を図り会社を追い詰めていった。対してエフィッシモは正論を掲げて会社側の非をあげつらい、粛々と追い詰めていき、最終手段として裁判闘争に持ち込んでいくやり方が特徴だ。

売り抜け成功相次ぐ

 そうやって上げた戦果の代表例は、ダイワボウ情報システムと新立川航空機・立飛企業グループの買い占め劇だった。

 デビュー戦ともいえるダイワボウ情報システムの買い占めが明らかになったのは07年8月。投資額は129億円に上った。同社は親会社である老舗繊維会社ダイワボウと親子で上場しているという難点を抱えていた。結局、翌年10月、ダイワボウは買い占め株の引き取りを決定。エフィッシモはじつに70億円もの売却益を得た。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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