危険な水銀排ガス、これまで東京の空に放出が野放し…ごみ清掃工場の事故多発
水銀に関する水俣条約、間もなく発効
国際水銀条約「水銀に関する水俣条約」は、「水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護すること」を目的に、国連(環境計画)によって提案され、熊本で開催された国連外交会議で2013年10月に採択された。同年に日本も参加し、92カ国によって署名され、50カ国以上の締結国の批准を経て、間もなく正式発効される予定だ。そして水銀の削減、廃絶、保管に向かう。
日本も締結国として国内法「水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)」と「大気汚染防止法の一部を改正する法律」を15年6月に公布し、18年4月1日に施行される。
水銀汚染防止法では、市町村は水銀の回収のために努めること、国はそのための技術的な援助などを行うことを定めた。一方、大気汚染防止法では、大気中への水銀排ガスの削減を狙い、水銀を排出する事業者などに排出基準の遵守と水銀濃度測定を義務づけた。この法令は、18年4月に施行される。これに伴い、国内の水銀排ガスの約3分の1を占める廃棄物(一般ごみ、産廃、下水汚泥など)焼却炉への規制も始まる。
水銀排ガスが、なぜごみの清掃工場の焼却炉から排出されるのか。実際に水銀排ガス事故が、下記のように3つの清掃一部事務組合で26回も起きている。
東京23区の850万人のごみを焼却処理する「東京23区清掃一部事務組合」(23区清掃一組)では、10年から今日まで、この法令に先立って設けた自主規制値(EUの基準0.50μg/Nm3と同じ)を超える水銀汚染事故が18回も起きている。そのたびに焼却炉を停止している。
また東京都下、三多摩地方の三鷹市と調布市のごみを焼却するふじみ衛生組合でも、13年の稼働後、今日まで7回にわたり同様の水銀汚染事故を起こしている。同西東京市、清瀬市、東久留米市のごみを焼却する柳泉園組合でも15年9月1日に16時間も水銀排ガスを出し続ける事故が起きた。
水銀に関する水俣条約は、世界的にも悲惨な水銀公害である水俣病を起こした日本が、その公害を克服するなかで、水銀条約を世界に発信するという建前のもとに「水銀に関する水俣条約」としたが、水俣病公害が残した教訓と事故の実例をみながら、水銀汚染防止の諸問題を探る。