「タコツボ的な組織を排除し、全社で見直しを進めており、急速に会社が変わってきている」(三菱自動車工業・池谷光司副社長)
燃費不正事件を機に日産自動車の傘下に入った三菱自が業績を急速に立て直していることに、業界内で驚きの声が広がっている。これが、かつて倒産の危機に瀕していた日産をV字回復で再建を果たし、グローバルな大手自動車メーカーの一角にまで成長させてきたカルロス・ゴーン日産社長兼CEO(最高経営責任者)の手腕なのか。
三菱自は1月31日、2017年3月期の通期連結業績の上方修正を発表した。昨年10月に公表した通期の営業損益は276億円の赤字を予想していたが、今回10億円と水準は低いながらも黒字となる見通しとなった。
この間、三菱自は新型車を投入してそれがヒットしているわけではない。それどころか、三菱自は通期の新車販売見通しを93万3000台から92万1000台に引き下げている。その一方、売上高は為替換算の影響から前回予想より500億円増となる1兆8900億円に上方修正した。
大きく改善したのは営業利益だ。三菱自では16年10月-17年3月の下半期に営業黒字化することを当面の最大の目標としていたが、16年10-12月期の3カ月間で84億円の営業黒字を達成した。
これを実現できた最大の要因が、コスト削減だ。10-12月期に販売台数やモデルミックスの悪化などで、前年同期と比べて151億円の減益要因があったが、コスト削減で59億円の増益要因が発生した。さらに、燃費不正事件に伴うサプライヤーや販売店への補償として計上していたコストについて「使いきれなかった分戻した」ことから、その他費用として66億円を計上、これが原動力となって営業黒字化を達成した。
池谷副社長は「(為替水準の変動などを加味して)採算を優先して販売地域を変えるなど、責任者が機動的に採算をあげられる仕組みを構築できた」ことが想定以上の業績に結びついたと解説する。