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ファミマ、沖縄で圧倒的に強い謎…石垣島にも18店舗、セブン進出で勢力図激変は?

文=伊藤歩/金融ジャーナリスト
ファミマ、沖縄で圧倒的に強い謎…石垣島にも18店舗、セブン進出で勢力図激変は?の画像1ファミリーマートの店舗(撮影=編集部/写真は東京都内の店舗)

 セブン-イレブンがついに沖縄進出――。コンビニエンスストア業界の巨人、セブンが47都道府県中唯一出店していなかった沖縄に、2018年をメドに進出するというニュースは、昨年6月28日付日本経済新聞が報じたもの。会社側から正式なリリースはいまだに出ていないが、日経新聞は古屋一樹新社長のインタビュー記事でこの件を報じており、会社側が否定した形跡もないので、鋭意準備中なのだろう。

 沖縄にあるコンビニは、ファミリーマートとローソン、それにココストアの3社だったが、ココストアが15年10月にファミマに買収され、2カ月後の12月に吸収合併されたため、昨年夏までにココストア店舗はファミマに衣替えされた。このため、現在沖縄県内にあるコンビニはファミマとローソンのみ。昨年12月末時点の店舗数は、ファミマが317に対しローソンは207。

 まず単純に店舗数で6対4でファミマに軍配が上がるうえ、ファミマは宮古島、石垣島、久米島にも出店していて網羅性も高い。久米島は2店舗、宮古島と石垣島にはそれぞれ18店舗あるが、ローソンは沖縄本島以外には店舗はない。

決め手はセゾン時代に導入したエリアフランチャイズ制

 なぜファミマは沖縄に強いのか。答えは「エリアフランチャイズ制が奏功したから」である。

 ファミマの沖縄進出は今から30年も前の1987年。当時のファミマは西武セゾングループ傘下のコンビニ。沖縄に進出する2年前の85年、地方企業と提携して地域限定の営業権を認めるエリアフランチャイズ制を導入している。本部と店舗の間にエリア本部という中二階を設けるシステムである。

 エリアフランチャイザー第1号は中部ファミリーマート。名古屋の総合酒販センターという会社とファミマが合弁で設立した会社である。第2号が沖縄で百貨店等を営むリウボウという会社と合弁で87年に設立した沖縄ファミリーマート。

 以降、89年に長崎市の松早コンビニエンスストアとの合弁で松早ファミリーマート、福岡市の名門百貨店・岩田屋と合弁でアイ・ファミリーマート、90年に福井市のスーパー・ユースと合弁で北陸ファミリーマート、97年に鹿児島県の酒類・食品卸の本坊商店と合弁で南九州ファミリーマート、そして06年にスーパー・セイコーマートを経営する北海道の丸ヨ西尾と合弁で北海道ファミリーマートを順次設立。

 これらのエリアフランチャイザーは店舗拡大に大きく貢献したが、このうち現在も残っているのは沖縄ファミリーマートと南九州ファミリーマートだけ。他はファミマ本体に吸収されたり、合弁を解消したりして消滅している。

 西武セゾングループの経営悪化に伴い、ファミマ本体は98年に伊藤忠商事に売却され、昨年9月にはユニーと経営統合し、ユニー傘下のサークルKサンクスを順次ファミマ店舗に転換する計画も進行中だ。

ファミマ、ローソンの沖縄は黒字

 一方、ローソンが沖縄に進出したのはファミマ進出から10年後の1997年。当初は本社直轄で進出したが苦戦、2009年に沖縄県内最大手のスーパー・サンエーとの合弁でローソン沖縄を設立。エリアフランチャイズ制に切り替えたことで、漸く追撃体制が整い、200を超える店舗網構築に至った。

 コンビニはそこで売っているものが現地の人に受け入れられなければ経営は成り立たないし、出店する立地の選定から確保に至るまで、地元の情報に精通している必要がある。そのためには地元の企業とタッグを組む必要があるが、地元企業とてメリットがなければタッグは組めない。

 ローソン本体のアニュアルレポートによれば、ローソン沖縄の16年2月期の営業収入は56億円で、営業利益は14億円。当期純利益は9億5400万円と、しっかり黒字を出している。

 ファミマのアニュアルレポートには沖縄ファミリーマートの業績は載っていないが、信用調査機関によれば、同じ16年2月期の営業収入は594億円で営業利益は15億円、当期純利益は9億2287万円。ローソン沖縄に比べて売上高が10倍近く多いのに、利益水準が大旨同じなので、おそらく沖縄ファミリーマートは店舗を直営しており、店の売上が直接反映されるのではないか。それに対しローソン沖縄はFC本部になっており、FCから上がってくるロイヤリティだけが売上高に反映しているということなのだろう。

エリアフランチャイズ制なきセブンの戦略は?

 いずれにしても、沖縄のファミマとローソンは現状ちゃんと利益が出ている。それでは、そこへセブンが参入するとどうなるのだろうか。

 沖縄にあるコンビニの数は2社分合計で500強。県の人口が144万人なので、県民2700人~2800人に1店舗の割合になる。似たような人口の県というと、滋賀県の141万人、山口県の139万人といったところ。滋賀県内のコンビニ総数は550強で沖縄とほぼ同数。山口県もほぼ同じ。沖縄の2倍の人口がいる広島県は1100強なので、県人口と店舗数の割合はほぼ同じ。ということは、居住人口だけでいえば沖縄はすでにほぼ飽和状態ということになるのだが、あとは観光客需要の上乗せがどのくらいあるかだろう。 

 そもそもセブンはエリアフランチャイズ制を導入していない。前出・日経新聞のインタビューでは、地元企業の協力をどういったかたちで取り付けるつもりでいるのかがまだ見えていない。

 手っ取り早いのはファミマやローソンの店舗を切り崩すことだが、長年のしがらみは当然あろうから、セブンの商品がファミマやローソンの商品よりも圧倒的に優れていることが絶対条件になる。業界地図が塗り変わるのかどうかがみえてくるのは、もう少し先になりそうだ。
(文=伊藤歩/金融ジャーナリスト)

伊藤歩/金融ジャーナリスト

伊藤歩/金融ジャーナリスト

ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計。主な著書は『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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