出光興産の株価が高い。2月16日、5日続伸で始まり、一時前日比160円高の3700円をつけて、1月27日以来3週間ぶりに2007年以来の高値を更新した。2月末も3680円と高値圏のままだ。
原油価格が堅調なことが支えとなったが、株価が反転したきっかけは、昭和シェル石油との経営統合をめぐって出光創業家の代理人、浜田卓二郎弁護士の辞任が伝えられたからだ。「これで合併交渉が進展する」との期待から買われたとみられている。
創業家の代理人として、経営側と協議してきた浜田氏は2月10日、代理人を辞任したと発表した。9日付で代理人と創業家の資産管理会社、日章興産の代表取締役を辞任したという。
浜田氏は「昨年10月に合併の無期延期が表明され、その後、統合の基本合意も実質的に白紙撤回され、ひとつの目標は達成できた」とするコメントを出した。
浜田氏の突然の辞任に各メディアは「合併交渉は不透明」と報じた。合併に強く反対する出光創業家と、対立解消を模索していた浜田氏との意見の温度差を取り上げた媒体もあった。
ところが、市場の反応は違った。浜田氏の辞任で経営側と創業家の和解が進み、昭和シェルとの合併交渉は進展すると先読みした。つまり、創業家の出光昭介名誉会長が、経営側との和解を決断したと受け取ったということだ。
浜田氏は、「出光昭介名誉会長からは、できるだけ争わずに話し合いで決着してもらいたいという委任を受けた」と明かし、そのうえで「委任の趣旨を踏まえて代理人を辞任する」とコメントした。
浜田氏は2016年6月の出光定時株主総会で、昭和シェルとの合併に反対を表明。同年7月、昭介氏が昭和シェルの株式40万株を取得する奇策を打ち、出光の昭和シェル株取得を困難にした。
16年10月、両社は17年4月に予定していた合併期限の延期を決めた。これが「目標を達成した」と浜田氏がコメントした実績だ。合併阻止はやり遂げたということになる。
だが、これに昭介氏が諸手を挙げて賛成したわけではなかった。「争わずに話し合いで決着してもらいたい」と思っていたのに、経営側と抜き差しならぬ対立を招いた。浜田氏はその後も強硬姿勢を示し、創業家と経営側が話し合いのテーブルにつけないほど対立は泥沼化した。
出光は昨年12月、公正取引委員会の承認を受け、昭和シェル株式の31.3%を英蘭系大手ロイヤル・ダッチ・シェルから取得。現在は昭和シェルと合併に向けた協議を進めている。ただ、合併には出光株の3分の1超を握る創業家の同意が不可欠だ。
一部には、泥沼の争いを招いた浜田氏を昭介氏が解任したという見方もある。また、写真週刊誌「フラッシュ」(光文社)が浜田氏のスキャンダルを報じたことが原因という向きもあるが、それは違うだろう。