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家族を振り切ってホームから電車に飛び込み自殺…なぜ日本人は「過労で死ぬまで」働くのか?

構成=長井雄一郎/株式会社フォークラス・ライター
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家族を振り切ってホームから電車に飛び込み自殺…なぜ日本人は「過労で死ぬまで」働くのか?の画像1強制捜査を行い、押収物の段ボールなどを手に電通本社を出る厚労省の職員ら(読売新聞/アフロ)

 電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が2015年末に過労の末に自殺で亡くなった事件で、昨年10月に長時間の過重労働が原因だったとして労災が認められた。

 厚生労働省の統計では、15年度で過労自殺(未遂含む)の労災請求件数は199件で支給決定件数は93件。だが、それも「氷山の一角にすぎない」という声も多い。内閣府自殺対策推進室によると、「勤務問題」を原因・動機とする自殺は2159件(15年)にも上る。日本社会は、いつまで長時間労働を放置するのか。それが今、問われている。

 なぜ、人は死ぬまで働いてしまうのか。ワタミなどの過労死事案に遺族側代理人として携わった、過労死弁護団全国連絡会議事務局長で弁護士の玉木一成氏に聞いた。

ワタミ過労死の原因は「365日24時間、死ぬまで働け」

――昨年10月、電通の過労死事案について労災が認められました。電通の社風にも問題があるという指摘もあり、労働基準法違反容疑で強制捜査や書類送検が行われ、さらには社長の石井直氏が辞任しました。この一連の流れについて、どうお考えですか?

玉木一成氏(以下、玉木) 高橋さんは、1カ月の時間外労働を約69時間と申告していました。しかし、労働基準監督署はうつ病発症前1カ月の時間外労働は100時間を超えると認定しており、ご遺族の主張はさらに長い130時間でした。そもそも、残業時間の過少申告は誰かの指示なのだろう、と推測しています。

 14年に「過労死等防止対策推進法」(以下、過労死防止法)が制定され、15年には、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、大綱)が閣議決定されました。また、安倍晋三首相も「働き方改革」として長時間労働を是正することを政策の重要課題としています。「まさに、これから」というときに電通過労死事案が発生したことは政府としても見過ごせない、ということで強制捜査や書類送検に踏み切ったのではないでしょうか。

 特に電通は、過去に最高裁判所が過労死と判断して労災認定された前例もあり、悪質性も高い。電通の事案を放置すれば政府や厚労省への批判も高まる、という判断があったのだと思います。

家族を振り切ってホームから電車に飛び込み自殺…なぜ日本人は「過労で死ぬまで」働くのか?の画像2玉木一成氏

――ワタミの過労死事案の遺族代理人を務めての感想は?

玉木 遺族側は、金銭的な補償よりも「なぜ、ワタミに入社して約2カ月で自殺したのか」の原因となった事実を知りたかったのです。そこで、事実関係や原因を調べていくと、最終的には長時間労働をはじめ休日にもレポート作成やボランティア活動を強要する渡邉美樹氏の経営理念が根本にあることがわかりました。その理念とは、当時の社員向けの冊子(理念集)にある「365日24時間、死ぬまで働け」に尽きるわけです。

 ワタミが一転して責任を認めたのは、まず世論の厳しい追及によって「ブラック企業」という批判を浴びたことがあります。そして、企業の存立にかかわるほど売り上げが下がり、人材も集まらなくなり、数多くの店舗が閉店を余儀なくされ、過労死事案を解決しないと企業が維持できないところまでいきました。それが、遺族側との和解に至った最大の理由です。つまり、ご遺族の活動が世論を動かし、ワタミも責任を認めざるを得なかったということではないでしょうか。

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