連休明け、「五月病」に悩む人も多い時期だが、あなたはどんな気持ちで毎日を送っているだろう。急に他人の生活がうらやましくなったり、メディアに登場する大金持ちを見て「夢のような生活を送っているなあ」とため息をついたりしている人も多いのではないか。
例えば、人気ミュージシャンがテレビで東南アジアの豪邸を紹介し、セレブな生活を披露したり、SNSでは高級ブランドを控えめにアピールしながら自らのセレブっぷりを見せつける女性タレントの写真がアップされたりと、至るところからお金持ちたちの優雅な生活が目に入ってくる。
きっと彼らは仕事もプライベートも順調で、経済的にも豊かで、人間関係にも悩みがない。誰もがうらやむ人生の成功者は、きっとこんな満ち足りた暮らしをしているのだろう。
しかし、そんな「成功者」像は本当に理想の中のものでしかないのかもしれない。
■「仕事もプライベートも順調な成功者」は幻想である
2007年2月に大和書房から文庫化され、今年5月14日にオーディオブック版が発売された『成功する男はみな、非情である。』の著者であり、10代の頃から多くの成功者に身近に接してきたいつか氏は、「成功とはそんな甘いものではない」という現実を教えてくれる。
成功した数多くの男たちにインタビュアーとして話を聞く機会に恵まれたいつか氏は、多くの成功者が他人には明かさない「帝王学」の本質を聞き、少しずつノートに書き留めていった。
そのノートは約1年に1冊。計20冊の中に秘められた成功者たちの哲学を俯瞰してみると、ある「法則らしきもの」が見えてきたという。その「強者の論理」を一冊に凝縮したのが本書だ。
■本当の成功者はみな孤独であり、非情である
いつか氏によれば、成功者はみな孤独であり、成功のためには人間関係も、自分の他の望みも捨て去る覚悟を持っているという。
彼らは一般の人たちが考える「あたたかな人間関係の中でこそ成功し、幸せになれる」という通念の外に生きている「非情」な存在なのだ。
「福禄寿 人生全部はとれないものよ。」というのは、香港のバーで、ある富豪が著者に語った言葉だ。
福は幸福、禄は富、そして寿は健康のこと。この3つすべてを手に入れることはできないことを成功者は知っている。真の成功者は、成功のために必要なものを効率的、合理的に選びとり、そうでないものはバッサリと切り捨てるのだ。
これは仕事の相手から、家族や友人などの身近な人間関係にまで言えることで、例外はない。また、人だけでなく手段も選ばない。成功するためには、モラルや常識的な考え方、人間の情というものは、時に足かせになる。
このくらい強く覚悟を決めて成功を追い求める生き方を貫いている人でなければ、常にリスクと隣り合わせで、厳しい世界を生き抜いていくことはできないということだろう。
本書の冒頭にも、成功すればするほど、一番親しいのは弁護士や医師など「士」「師」がつく専門職の人たちばかりになっていくという話が書かれている。殺伐としているようにも感じるが、それが現実なのだ。