2016(平成28)年末に成立した統合型リゾート整備推進法(通称:IR推進法)によって、政府や自民党などはカジノを設置する自治体を選定する作業に入った。
当初、東京都と大阪府が有力とされてきたが、舛添要一都知事(当時)が誘致に消極的だったこともあり、東京は招致レースから脱落。代わって、神奈川県横浜市が有力視されるようになった。
一方、もうひとつの有力地とされてきた大阪は着々とカジノ開設への準備を進めてきた。大阪は府民に理解を広げるべく、繰り返しシンポジウムを開催。カジノを開設する地として埋立地の此花区夢洲エリアにターゲットを絞り、松井一郎大阪府知事を筆頭に大阪維新の会(維新)が一丸となって誘致活動を展開してきた。
大阪にカジノを誘致することは、前府知事・橋下徹氏の悲願でもあった。それだけに維新にとってカジノ誘致は、“大阪都構想”と並ぶ一丁目一番地の政策。橋下・松井両氏はカジノ誘致を実現するため、安倍政権との距離感を縮めることに腐心した。そうした成果もあり、昨年までは「カジノは横浜と大阪で決まり」(大手紙記者)といった情勢だった。
しかし、大阪都構想の住民投票で敗北した橋下氏が政界からの引退を示唆すると事態は一転。大阪に代わって、和歌山が有力地として急浮上した。業界関係者は、こう話す。
「カジノはそこから生み出される収益や雇用だけではなく、カジノ建設でゼネコンなども潤いますし、駐車場を管理する企業、警備会社などにも恩恵があります。そのため、カジノによる地元への経済効果は計り知れません。地元への利益誘導という側面がありますから、簡単にカジノ利権を手渡すわけにはいきません。大阪にカジノという話は、安倍政権に貢献してくれた見返りともいえます。しかし、橋下さんが政界から距離を置いてしまい、安倍政権としてはカジノを大阪に開設する必要は薄れてしまいました。そうなると、自民党重鎮の選挙区にという流れになるのは必然でしょう」
横浜は菅義偉官房長官、和歌山は二階俊博幹事長の地元。それだけに、カジノ誘致は自民党内の力学が大きく左右しているとも受け取れる。こうしてカジノ誘致レースのトップランナーだった大阪は二番手に後退。それでも、カジノ開設に一日の長がある大阪は巻き返しを図ろうとしている。