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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

TPP、発効不透明のまま6千億円の対策費=税金投入 安倍政権の「自由貿易」の正体

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「Thinkstock」より

 環太平洋経済連携協定(TPP)や経済連携協定(EPA)は自由貿易だと政府やマスコミは宣伝し、国民の多くもそうだと信じている。しかしそれは嘘であり、誤りである。

 自由貿易とは、国語辞典「大辞林」(三省堂)によれば、「国家が商品の輸出入についてなんらの制限や保護を加えない貿易。輸入税・輸入制限・為替管理・国内生産者への補助金・ダンピング関税などのない状態」をいう。日本と欧州連合(EU)がこのほど大枠合意したEPAは、どう見てもこの定義には当てはまらない。

 報道によれば、交渉が難航していたチーズは、日本側が一定枠を設け15年かけて関税を無税にするという。EU産チーズはおもに29.8~40%の関税がかかっているが、大枠合意では低関税輸入枠をつくる。税率を段階的に引き下げて16年目にゼロにし、枠の数量は2万トンから16年目に3万1000トンまで引き上げる。対象はモッツァレラなどソフト系チーズだ。

 しかし、消費者への恩恵は限られそうである。枠を超えた分は今の高関税が残るうえ、そもそも3万1000トンという輸入枠自体、チーズ全体の消費量の7%(想定ベース)にすぎないからだ。消費者は安くふんだんに手に入ると思っていた欧州産チーズがどこに行っても見当たらず、困惑することだろう。

 報道によれば、日欧EPAの大枠合意は、チェダーなどハード系チーズの関税撤廃に応じる代わりに、ソフト系の関税を一定程度残したTPPとの「バランス」も考慮されたらしい。本当の自由貿易なら、消費者はそのような政治判断に基づいてチーズを選んだりしない。そもそも16年も先に日本がどんな政権になっているかさえ定かでなく、政治環境の変化でEPAそのものが反故になる可能性だってある。

 日欧EPAではこのほか、マカロニ、スパゲッティ、ビスケット、トマトソースなども関税撤廃の対象になっているが、目玉とされるチーズですら上記のような実情だから、ほかは推して知るべしだろう。

国民の享受するメリットはわずか


 一方で、政府・与党は農業団体などの反発を和らげるため、今秋をめどに支援策をまとめ、12月の補正予算案編成をめざす。農家に対する現行の交付金にさらに支援額を上乗せする案などが浮上しているという。その原資はもちろん国民の税金だ。

 15年間もかける関税撤廃に対し、あきれるくらい素早い対応である。しかも、もし関税がゼロにならなくても、支援策に使われた税金は返ってこない。

 貿易のメリットとは、安くて品質の良い商品を買う選択肢が広がり、国民の暮らしが豊かになることだ。EU産チーズには上記のように輸入枠が設定され、そもそもわずかな輸入量しか見込めないが、国民が享受するそのわずかなメリットさえ、対策費のために税金を取られれば吹き飛んでしまいかねない。

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