7月22日に連載開始20周年を迎え、ハリウッドでの実写映画化も発表されたばかりの超人気マンガ『ONE PIECE』。国内のコミックス販売部数はなんと約3億5000万部。日本のマンガ史に残る作品となっている。
そんな『ONE PIECE』の大きな魅力は、大人でも楽しめる豊かで巨大な作品世界と、膨大な数の登場人物だ。
特に、ルフィをはじめとする個性的すぎるキャラクターたちは、この作品と共に育ち大人になった私たちに、今度はビジネスシーンでも役立つ知恵を授けてくれる。
■『ONE PIECE』の人間模様はビジネスに役立つ
「『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方」(山内康裕、いわもとたかこ著、週間少年ジャンプ編集部監修、集英社刊)は、漫画『ONE PIECE』の名シーンから、多様な人が集まる会社での対人術やチームマネジメントのコツを導き出していく。
こうした『ONE PIECE』を題材にしたビジネス書は数多あるが、本書は監修として週刊少年ジャンプ編集部が参加している、いわば「公式本」である。
その大きな特徴は、この作品の個性あふれるキャラクターたちを「ヤンキー」と「オタク」という二種類に分類していることだ。
乱暴なイメージのある「ヤンキー」だが、仲間と認めた人間にはとことん優しかったり、行動力に長けていたり、一度決めたことをやり抜く根気があったりと、いい面もある。『ONE PIECE』のキャラクターでいえば、ほかでもない主人公のモンキー・D・ルフィがこのタイプだ。
一方「オタク」の特性は、多様性を重んじる、感情よりも理屈で動く、集団行動よりも自分の関心を優先させる、など。島に着くと、すぐに自分が関心を持つ歴史を調べようとするニコ・ロビンや、自分の目的のためにルフィに同盟を持ちかけた、トラファルガー・ローなどがこのタイプ。わき目もふらずに剣術に励むロロノア・ゾロなども、典型的な「オタク」だ。
ここで紹介する「ヤンキー」も「オタク」も、あくまで一般的なイメージにすぎない。しかし、職場内の一体感を大事にするタイプの社員が、個の論理を優先するタイプの人間を「協調性のない人間」と見なしたり、理屈で納得してから動くタイプの社員が、考えるよりもがむしゃらに行動するタイプの人間を苦手に思ったりということは珍しくない。「ヤンキー」と「オタク」の溝は、どんな職場でも生まれうるのだ。
■職場の「オタク」とどう接するか
しかし、この溝を乗り越え、協力関係を築いていかなければ、組織もチームもうまくいかない。
『ONE PIECE』第41巻に、ニコ・ロビンが、ルフィら「麦わらの一味」に加わる決心をするシーンがある。それまで、ルフィらと共にいることを居心地よく感じながらも、過去の境遇から「無条件に必要とされる仲間」を信じられなかったロビンは、一度はルフィの船を去る決心をする。
つまり、自分の中の理屈に捉われて、本当に進みたい方向(「麦わらの一味」に加わりたい)に進めないということ。これは「オタク」タイプが陥りやすいパターンだという。
この時、ルフィは熱い言葉で状況を一変させる。ロビンの本音を察したうえで、「お前は何がしたいんだ」とロビンに選択を突き付けたことによって、ロビンの本音を引き出したのだ。
どんな相手にでも体当たりでぶつかれるのは「ヤンキー」タイプの強み。「ヤンキー」と「オタク」、それぞれ性格は違っても、本音を語りかければ相手に響くというのは、「オタク」タイプを相手にする時に心にとめておくべきかもしれない。
また、行動に理屈を必要とするタイプだけに、物事の全体を見せて「今これをやる理由」を納得させること。そしてそれを説明する言葉の力も「オタク」とのコミュニケーションには必要だと本書は説く。
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もちろん、「オタク」が、時に強引で全体主義的になりがちな「ヤンキー」にどう対処していくか、また両タイプをどうチーミングしていくかも、本書では解説されている。
自分の職場のあの人は『ONE PIECE』でいうとどのキャラクターか。そんな視点を持ってみると、仕事が少し楽しく、スムーズになるのではないか。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。