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経産省に振り回される東芝…再建の命綱・半導体事業売却が頓挫の可能性、国のいいなり経営

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東芝・綱川智社長(つのだよしお/アフロ)

 東芝の綱川智社長は、悲しいかな今回も存在感はなかった――。「今回」とは、半導体子会社・東芝メモリの売却先を切り替えたことだ。東芝は2018年3月末までに債務超過を解消しないと上場廃止になる。債務超過解消の切り札が東芝メモリの売却である。

 8月23日付日本経済新聞が『東芝の半導体売却 WDと協議入り 機構と連携 月内決着へ 不調なら再建策見直し』と報じた。また、共同通信は『東芝:半導体子会社の売却交渉先、WD陣営に絞り込む方針』と伝えた。

 いずれも東芝が東芝メモリの売却について、米大手ウエスタンデジタル(WD)などの新「日米連合」と交渉を本格化させるという内容だ。新日米連合は、WD、米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行で構成される。

 これまで、「日米韓連合」が優先交渉権を得て交渉してきた。日米韓連合には米投資ファンドのベインキャピタル、韓国半導体大手SKハイニックス、革新機構、政投銀がグループを形成していた。革新機構と政投銀は、経済産業省の“御意向”に沿って新たな日米連合に乗り換えた。

 東芝は8月24日、社内外の取締役による会議を開き、月内の売却契約締結に向けWD陣営と優先的に協議することを決めた。

東芝メモリ売却は経産官僚が主導

 8月24日付朝日新聞は『東芝、新日米連合に軸足 半導体売却 経産省主導で一転』と報じた。記事によると、経産省の意向によって、東芝メモリの売却先が二転三転している様子がうかがえる。

 官僚たちの夏は人事の季節だ。経産省では7月5日、人事異動が発令された。同省のなかでは、電機業界を担当する商務情報政策局が東芝問題を扱う。商務情報政策局長だった安藤久佳氏は中小企業庁長官に転じ、寺澤達也氏が新たな局長に就いた。

 安藤氏は1983年、東大法卒、通産省に入省した。首相秘書官、資源エネルギー庁資源・燃料部長、関東経済産業局長を経て、15年から商務情報政策局長を務めていた。一方の寺澤氏は84年、東大法卒、通産省に入り、経済産業政策局経済産業政策課長、官房審議官、商務流通保安審議官を経て、15年から貿易経済協力局長だった。

 世耕弘成経済産業相が7月4日の記者会見で述べたところによると、「年次にこだわらない適材適所の異動」だという。安藤氏の異動も「特別なものではない」とコメントしている。だが、世耕氏の発言を額面通り受け取る向きはほとんどいない。安藤氏は東芝問題の渦中にいたからだ。

 東芝は6月21日、東芝メモリの売却について、日米韓連合を優先交渉先に決めた。「週刊文春」(文藝春秋/7月13日号)は、内幕について「交渉先は東芝が決めたことになっているが、経産省の意向に従った」との東芝幹部の言葉を用いて、安藤氏が働きかけたと報じている。

 WDは、同業の韓国・SKハイニックスを含む日米韓連合に売却することに強く反発。売却差し止めの訴訟を起こした。WDの訴訟リスクが解消されないことから、日米韓連合との交渉は行き詰まっていた。「いつまでかかるんだ」と世耕氏は激怒したと伝えられている。

 困難な状況を打開するため、経産省はWDと和解する方針に転換。新局長となった寺澤氏が、綱川氏にWDと交渉するよう働きかけた。

 経産省の意向に綱川社長は「御意」と従ったことになる。東芝の社内外の取締役も右向け右となったわけだ。これで東芝メモリの売却先が完全に入れ替わった。

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