「無印良品」は、それほど安いわけでもないにもかかわらず、好調のようだ。商圏は日本国内に限定されず、海外にも418店を出店し、国内の店舗数を上回る勢いとなっている。筆者のような中年男性ですら、確かに無印良品の店や商品に対して、良い雰囲気を感じてしまう。
こうした無印良品の魅力は、どのようにして生まれているのだろうか。
無印良品は1980年に西友のプライベートブランド(PB)として誕生し、1989年に良品計画として独立している。40品目からスタートし、現在は7000品目にまで拡大している。多くのPBが単に低価格のみを訴求してきたなか、いかにして無印良品は徹底した低価格とは一線を画し、おしゃれな人気ブランドになり得たのか。
無印良品のコンセプト
筆者はまずコンセプトに注目したい。
無印良品の有名なコピーである「わけあって、安い」をご存じの方も多いだろう。たとえば、初期のヒット商品である「こうしん われ椎茸」という干し椎茸の安さの秘密は、形の不揃いさや割れているためであり、ダシをとったり切って使う場合が多い干し椎茸において、こうしたポイントはなんら消費者の不利益にならないことが謳われている。
ホームページには、誕生から続く3つの原則として、「素材の選択」「工程の見直し」「包装の簡略化」が記されている。また、「極めて合理的な生産工程から生まれた商品はとても簡潔です。言わば『空っぽの器』のようなもの。単純であり空白であるからこそ、あらゆる人々の思いを受け入れられる究極の自在性がそこに生まれます」というコンセプトは、実際の店舗や商品に見事に反映されているといえるだろう。
実に立派なコンセプトだが、このような理想は多くの企業において単なる絵に描いた餅に終わってしまい、具現化できていないのが現実だ。では、なぜ無印良品は実現できているのだろうか。
シンプルなデザインを生かす業態
もちろん、経営陣やスタッフたちが強く理念に共感し、全力で取り組んできたというマネジメント的要素もあるだろうが、筆者はSPA(製造小売)という業態に注目したい。
無印良品のすべての商品は、自社で企画・開発され、流通・販売まで行われている。同様のビジネスモデルには、ユニクロやニトリなどがある。こうしたSPAの強みとして、しばしば中間コストの削減による低価格が指摘されるが、これ以外にも大きなメリットがある。