廃業に追い込まれる中小企業が激増…M&Aに申し込み殺到のワケ
2017年8月に創業した株式会社FUNDBOOK(ファンドブック)。同社が手掛けるのは、M&A(企業の合併・買収)アドバイザリー事業だ。その事業の特筆すべき点は、「中小企業経営者の問題解決に特化したM&A」を主軸にしているところにある。
そんな株式会社FUNDBOOK代表取締役CEO(最高経営責任者)であり、『M&Aという選択』(プレジデント社)の著者である畑野幸治氏は、「経営者や従業員が幸せになれるM&A」という理念を掲げている。
第1回では、畑野氏自身の体験から、企業の「廃業」によって従業員とその家族が背負う苦労を語っていただくとともに、現在の事業にかける思いの原点を振り返っていただいた。
第2回となる今回も、畑野氏に半生を振り返ってもらい、M&Aアドバイザリー事業を展開することになった経緯と株式会社FUNDBOOKが目指すM&A事業について、話を聞いた。
「家族を助ける」という目的を果たした日
――畑野氏の家族は、1997年の山一證券廃業によって苦境に立たされることになった。父親は山一證券で役員目前までキャリアを積んだものの、廃業によって失職。その後起業するも、不況の煽りを受けて経営難に陥る。実家が銀行の抵当に入り、過労で倒れた母親も治療費が払えず退院せざるを得なかった。畑野氏が14歳の頃の話だ。
そんな苦境のなか、畑野氏は「家族を助けたい」と大学在学中に起業することを決めた。しかし、最初は苦労の連続だったという。
畑野幸治氏(以下、畑野) 最初に立ち上げたのは、株式会社Micro Solutionsという通信事業を行う会社でした。そのときは、「自分の年収が3000万円になったら家族を助けられる」というくらいのことしか考えていませんでした。しかも、会社をつくろうというのに「物件はどうやって契約すればいいのか?」「社会保険って何?」といった具合で、何もわかっていないありさまでした。
その上、経理、総務、財務、資金調達とすべて自分でやらなければならず、週に何日も会社に泊まり込んでいました。普段は営業活動をして、終わったら経理の作業。それもやり方がわからないから、勉強しながらなんとかやっていく……そんな感じでした。
とにかくやる気だけはあったので、それでも続けていった結果、それなりの会社に成長していきました。ですが、今振り返ってみると、やはりこの会社は私の力不足でうまくいきませんでした。ただ、学んだことは多かったです。
私は、知識や経験を学ぶ方法は大きく分けて3つあると思っています。「活字から学べること」「実体験から学ぶこと」「たくさんの人に会って生きた声を聞くこと」。本を読んで学んで、失敗と成功から学んで、その時々で出会った人から学ぶ。特に、当時得た知識や経験は、今の事業を築く礎になっていると思います。
それから、ネット型リユース事業を立ち上げて、成功といっても差し支えのない結果を出すことができました。その会社を株式譲渡で売却して、私はようやく当初の目的である「家族を助ける」ことができました。銀行の抵当に入っていた実家のローンを完済したんです。