2017年は、過去にないほど「宅配」に注目が集まりました。2月、ヤマト運輸が労働組合と総量規制を含め労働時間を減らす交渉に入ったことが日本経済新聞に報じられ、3月にはサービス残業問題が明らかにされました。もともと消費者からの好感度が高いヤマト運輸のドライバーへ同情が集まり、一時は「ネット通販買い控え運動」のようなものまで行われました。
しかし、その後に値上げ幅が15%にものぼったため、少しネガティブな空気が流れました。同時に、大口荷主(宅配をたくさん依頼する事業者)に対して大幅値上げを要請し、会社によっては解約通知のような文書も手渡されました。値上げ幅に関しては「5倍」とも報じられましたが、2倍を超える要請は少なくはありませんでした。
その裏側では、佐川急便も大幅値上げに動いていました。そして、シェア2位を狙う日本郵便は値上げを先送りにしていましたが、九州を中心に一部荷主には値上げを実施しています。加えて総量規制を実施し、前年同月比で10月は1.1%減、11月は5.4%減と減少につなげました。ネット通販市場は拡大傾向なので、相当な努力をしたと評価したいと思います。ただ、それでも2005年と比べて1.6倍(11月)、15年比で3.5%増(同)です。
そして年末の繁忙期は、日本郵便の1万3500個の遅配やV6の岡田准一さんと宮崎あおいさんの結婚を報告する会報誌誤配(指定日の2日前に到着)に注目が集まりましたが、実際には11月より各社遅配が発生しており、日本郵便は健闘していただけに、残念な結果になってしまいました。
以上の動向について、もう少し切り込んでみましょう。
この危機は予見されていた
以前より私はこのような危機的状況になることを警告していましたが、それが現実になったというのが実感です。なぜなら、日本の流通の3~4年先を行く米国では、11年12月の宅配ぶん投げ事件、13年のクリスマス大遅配問題などがあり、宅配事業者の現場は危機的状況にありました。なので、それを予見し宅配事業者にだけ問題解決を丸投げするのでなく、宅配を依頼する事業者(荷主)も積極的関与をすべきと考え、年間1.5億個を出荷する荷主グループが集まって「宅配研究会」を立ち上げたのは、2014年2月でした。さらに宅配研究会が再配達ゼロアプリ『ウケトル』プロジェクトをスタートしたのは15年4月です。