宅配事業者のヤマト、佐川、日本郵便の大手3社は、この問題を認識していなかったわけではなく、各社はこの問題に対応しようとしていました。特にヤマトは東名阪を当日配送でつなぐ「ゲートウェイ構想」で、配達のキャパを大きく上げようとしていました。『ヤマト正伝』 (日経BP社/日経ビジネス)でも触れられているように、本来ならもっと前に値上げをしなければならないのに、対応が遅れたのです。
実は私は14年に、一律5%値上げを5年連続で実施することを提言しています。なぜなら、5%であれば荷主とその顧客の努力で吸収できるからです。また、各社で値上げ幅や方法が違うと消費者が不満を感じ、その矛先は宅配会社に向きます。17年頭には「人件費サーチャージ」や「燃油サーチャージ」を提案しました。不満や不公平感を抱かせない値上げ方法を模索するのが得策です。実際、ヤマトが人件費サーチャージのような価格体系の導入を模索しているとも報じられています。
宅配ドライバーの過重労働問題
ただ、勘違いしてはいけないのは、17年の問題は値上げにあったわけではないという点です。もともとは宅配ドライバーの過重労働問題であり、労使で約束していた労働時間が2年連続守れなかったことが問題の根本です。「値上げすれば、過重労働が減る」ということはありません。以下図のように、過重労働の大きな要因は「当日配送」と「再配達」です。アマゾン向けの当日配送が始まった後は残業が増え、サービス残業が発生しました。国土交通省の調べによると再配達は全体の約2割ですが、現実には1日数回同じ場所に運ぶためドライバーの体感値は35%にも上ります。
よって、問題が明らかになった3月から、当日配送と再配達の解消こそが問題解決には必要だと訴えてきました。現在、当日配送は大幅に減っています。ただ、再配達は公共宅配ロッカーなどに頼っているため、なかなか減っていません。「クロネコメンバーズ」や「ウケトル」などのアプリを導入するだけでも大きく減るので、インストールが促進されるべきです。「ウケトル」を導入すると再配達が18%減り、コスト削減効果は468億円です。
2018年は?
17年は大変な年でしたので、「18年は安泰」だと言いたいところですが、ネット通販市場やオムニチャネル(リアル店舗のデジタル化)が年々拡大するので、宅配個数の減少はありえず、大幅増が続きます。新しい取り組みを始めないといけません。その内容については、次回書こうと思います。
(文=角井亮一/イー・ロジット代表取締役社長)