元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな確定申告は「青色申告」です。
確定申告には、青色申告と白色申告があります。納税者にとって、嬉しい特典がいっぱいなのが青色申告ですが、約束やルールを守らないと青色申告は取り消されてしまいます。今回は、農家を営む納税者が青色申告を取り消されてしまった事案について解説します。
セロリと温州みかんの栽培を営む納税者のところに、無予告での税務調査が実施されました。調査官は、午前9時に納税者の住所地に臨場し、青色申告にかかる帳簿書類の提示を求めました。帳簿書類は、売上帳、経費帳、現金出納帳、領収書、請求書、損益計算書、貸借対照表といった書類です。しかし、納税者は「帳簿はつけていない。領収書により計算している。正しく申告しており、どこが間違っているのか言ってくれれば領収書を見せる」と言うのみで、調査官の再三の提示要求にも応えず、25分間にわたって書類を提示しなかったそうです。さらに、業界の会合があることを理由に調査を断りました。
2日後、当該納税者の関与税理士が税務代理行為の委任を受けた旨を電話で調査官に連絡、さらに1週間後、帳簿を提示しました。
調査官が帳簿を確認すると、売上を記載したノートには、出荷先別の年間の合計額が記帳されているのみで、取引別、月別の売上は記載されていませんでした。また、経費については、確定申告書に記載された金額と一致せず、一部の取引のみが記帳されていました。
さらに、経費の領収書綴りを確認しても、納税者が必要経費として確定申告書に記載したものの一部であり、経費の金額を水増し、あるいは領収書を破棄していると考えられました。
しかし、領収書がないだけでは、すぐに架空経費や領収書の破棄と認定することはできません。2カ後、調査官は税理士に対し、いまだ提示していない帳簿及び経費の領収書はないか、納税者と直接面接して確認したい旨を電話で伝えました。いわば、「まだ見せていないだけで、あるんでしょう? いま、領収書を見せれば、架空経費にならないよ」と猶予を与えているわけです。
これに対し税理士は、「帳簿は提示したものがすべてであり、提出していない経費の領収書はない。そのため面接する必要はない」と回答しました。