金融庁は銀行法に基づき、スルガ銀行への緊急の立ち入り検査を始めた。今年3月、シェアハウスへの投資をめぐる融資トラブルで、報告徴求命令を出しているが、立ち入り検査の結果次第では行政処分を検討する。金融庁は、スルガ銀行の役員が、融資の審査を通りやすくするために書類の改竄など不正行為に関与していた可能性があるとみている。
首都圏で女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する不動産会社スマートデイズ(旧スマートライフ)は、1月から物件所有者への賃料の支払いを突然停止し、オーナーのうちで資金繰りがつかなくなる人が続出した。大地則幸・元社長時代にトラブルの種は蒔かれていた。
スマート社は4月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。帝国データバンクによると、今年3月末時点の負債総額は約60億円という。
オーナーはシェアハウスをスルガ銀行からの融資を受けて建設。スマート社が一括借り上げをしたうえで女子学生らに転貸し、一定の家賃を保証する「サブリース」と呼ばれる方式を採用している。副収入を得たい30~50歳の会社員ら700人が事業に参画した。
同社は「頭金なしで投資ができ、30年間家賃収入を保証する」ことをセールストークに、創業から5年余りで管理棟数は845棟、1万1259部屋にまで拡大した。未完成のものを含めると1000棟規模に達するという。
オーナーたちのほとんど(一部では8割超との報道もある)は、スルガ銀行横浜東口支店から、使途自由の「フリーローン」を借りていた。金利は7.5%程度と高く、1000万円借りると年75万円の利息がかかる。1棟で1億円前後する土地・建物の資金を融資しており、借入金が1億円の場合、年間の支払い利息だけで750万円に達する。賃料がストップしたことで、オーナーたちは困窮した。2億円以上借りている人もいるという。
オーナーらで構成する「スマートデイズ被害者の会」は、スルガ銀行に一時返済猶予を求めた。スルガ銀行の“貸し手責任”を追及する構えを見せている。
オーナーらはスルガ銀行から融資を受ける際、スマート社に預金通帳の写しなどを渡し、銀行との手続きを一任。ところが、一部の融資では通帳の写しを偽造したり、ゼロを増やしたりしていた。3月末には一部のオーナーがスマート社と同社役員らを相手取り、損害賠償訴訟を起こした。
過剰融資はスルガ銀行横浜東口支店の独自の判断なのか、それともスルガ銀行の組織ぐるみだったのかが焦点となる。スルガ銀行のかぼちゃの馬車関連の融資額は1000億円規模に上るとみられている。