日系自動車メーカーでトヨタ自動車に次いで2社目となる、1兆円の純利益を達成したホンダの先行きを不安視する声が強まっている。利益の柱である米国の市場動向の変化に対応できていないことや、米国に並ぶ規模にまで事業を拡大してきた中国では、主力モデル「CR-V」のリコール問題によって販売停止が長引いているからだ。
ホンダが4月27日に開いた決算発表の記者会見では、驚きの声が広がった。2018年3月期業績の当期利益が前年同期比71.8%増の1兆593億円と1兆円を超えて過去最高になる一方で、今期(19年3月期)業績見通しの当期利益が前年同期比46.2%減の5700億円と半減すると公表したためだ。
ホンダの18年3月期の業績が好調だったのは、中国の販売が好調で持分法投資利益が増加したのに加え、米国トランプ政権の法人税減税で「繰り延べ税金負債」を3461億円計上したためだ。本業でも四輪車販売が同3.4%増の519万9000台と過去最高となるなど、一見、順調に見えるが、先行き不安要素が見え隠れする。
ホンダの主力市場で利益の柱である米国の四輪車販売が同0.4%減の163万9000台と、わずかながら前年を割り込んだ。SUVの販売を伸ばしているが、セダン系の販売が大幅に落ち込んでいる。米国新車市場は人気がSUVに集中しており、日系自動車メーカーの得意分野であるセダン系の販売は落ち込んでいる。米フォードは、一部スポーツモデルなどを除いてセダンの次期モデルの開発中止を発表するなど、米国市場でのセダン離れは鮮明。ホンダもすでに「アコード」を減産しており、今後も「アコード」「シビック」といったセダン系が苦戦を強いられるのは必至だ。
ホンダの倉石誠司副社長は、「シビック、アコードといった代表的商品はこれからも売っていきたい。SUVとセダンの比率はガソリン価格によってかなり変わるので、セダンでもSUVでも市場に受け入れられる商品を投入して、過去最高の販売を目指す」と、セダンにも力を入れる戦略を変えない。しかし、「アコード」などの販売を促進するためのインセンティブ(販売奨励金)が上昇しており、今後、利益率の悪化は避けられない見通しだ。