7年前にオリンパスの損失隠しが発覚したときのことを振り返っておきたい。
当時の経営陣は大手証券会社出身の経営コンサルタントを使って、ほとんど価値のない企業を買収していた。そしてその買収が正当なものであることを装うために、大学教授や弁護士、公認会計士に買収金額が妥当であるかどうか、報告書を書かせた。当然ながら、でき上がった報告書はオリンパスの意向に迎合したかのような、“ぬるい内容”だった。
今回浮上している贈賄疑惑でも、オリンパスはこれとそっくりなことをやっている。中国マフィアとみられる経営コンサルタントを起用して、理論在庫問題を秘密裏に解決させた(詳細は6月1日付当サイト記事『オリンパス、腐敗行為防止法違反の疑い…社員が内部通報も、揉み消しか(1)』参照)。そして、これが法律上、正当な手段や手続きであったことを大手法律事務所に検証させ、「最終報告書」として提出させた。第三者を使って、弁護士や公認会計士といった権威に正当化してもらうのは、損失隠しのケースとよく似た構図である。
内部告発
ところが今回は、そうした企みに社内から思わぬ邪魔が入った。オリンパスのアジア・パシフィック地域統括会社(OCAP)コーポレート・ガバナンス部門の日本人マネジャーが、海外の有力な3つの法律事務所に意見書を求め、その上でオリンパスの方針に異を唱えたのだ。これらの法律事務所がまとめた報告書は、いずれも前出の「最終報告書」にお墨付きを与えたり迎合したりするような内容ではなかった。
法的な見地から米国の海外腐敗行為防止法(FCPA)に照らして、オリンパスの一連の行為が「クロ」であると認定される可能性が極めて高いことを指摘した上で、中国マフィアとみられる経営コンサルタントとの契約を即刻解除し、絶縁を急ぐよう進言する内容だった。米国のFCPAは日本の同種の法律とは建て付けが異なり、違法行為の範囲が広い分だけ厳しく、罰金も高額になる可能性があるのだ。
OCAPマネジャーはさらに周到だった。中国・深センで何が起きているのかを社外取締役に報告する会議に自分も出席させよと求めた。社外取締役に正確な情報を提供しなければ、彼らに高額の訴訟リスクが降りかかるうえ、オリンパス自体も損害リスクから無縁ではいられないからだ。加えて社外取締役への説明に当たっていたのが、深セン問題の当事者である常務だったことも理由のひとつになっている。これでは公平かつ公正な客観情報を期待できないのだから無理もない。
その頃、この問題をめぐってOCAPマネジャーが社内でやりとりしたメールには、こう書かれている。
「頭からのタックルをもって、会社の健全性を守りたいとおもいます」
この人物は損失隠し事件で深く反省するところがあったのか、何か心に期するものがあったに違いない。