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中西・日立会長、安倍首相を批判…企業への賃上げ介入に「賃金は労使で決めるもの」と不快感

文=編集部
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中西・日立会長、安倍首相を批判…企業への賃上げ介入に「賃金は労使で決めるもの」と不快感の画像1経団連の次期会長に内定した中西宏明・日立製作所会長(写真:東洋経済/アフロ)

 5月末に退任した日本経済団体連合会の榊原定征・前会長は、経団連の地位をずいぶん下げた。「安倍晋三首相のポチ」と呼ばれ、「政府と経済界は自動車の両輪」がモットーだった。ちなみに、亀井静香・元代議士は最近、安倍首相に会い「トランプ大統領のポチになるな」と忠告した。

 一般的に秘書上がりの経済人は、どうしても協調型となり権力者に弱い傾向がある。榊原氏は、東レの前田勝之助社長の秘書になったことが出世の糸口となったが、安倍首相との関係において秘書上がりの欠点をさらけ出したといえる。

 5月22日付読売新聞にある「積極的な賃上げや企業献金の再開を通じて安倍政権との関係強化を果たした」との評価は、ずいぶんと好意的な見方だ。反対に、「安倍政権に経団連は隷属したにすぎない」との辛口の批判もある。

 榊原氏のコメントは常に、安倍政権が打ち出す政策の追認ばかりだった。経団連の存在意義は薄れ、その結果、情報の発信力は極端に落ちた。安倍首相が賃上げの旗を振る「官製春闘」に全面協力したことは、禍根を残した。

 そもそも賃上げは労使で決めるもので、これが基本ルールだ。安倍首相に賃上げの「%」(パーセント)まで指示されるようになっても、一切反論めいたことを言わなかった。日本商工会議所、経済同友会の両トップは「官製春闘」に疑問を呈してきたが、榊原氏は、唯々諾々と安倍首相に付き従った。

 5年間中断していた企業献金への経団連の関与を決めたのも榊原氏だった。政権との関係を重視するあまり、「物言う姿勢」は影を潜めた。安倍首相が2度にわたって消費税率の引き上げを延長したが、榊原氏は結局、延期容認だった。

 経団連は長年、財政再建の必要性を強調してきた。だが、榊原氏から財政再建への熱意は感じられなかった。

 ほとんど表には出なかったが、経団連の副会長の間から「配慮というより、安倍首相への遠慮。これでは経団連の会長などいらない」といった痛烈な批判が起きた。

 子育て支援のために安倍首相が求めた3000億円の企業拠出をあっさり引き受けた際には、経済・産業界をあきれされた。日本商工会議所の三村明夫会頭は、「応じられない」と言い切った。

 榊原氏は安倍首相の外遊にも付き従い、4年間に29回海外に出掛けている。米国にも8回、経済ミッションを派遣したが、そのミッションも榊原氏本人もドナルド・トランプ大統領には、結局、会えずじまいだった。通商政策をめぐる米国側の強硬姿勢に有効な対策を打ち出せなかった。

 榊原氏の前任の米倉弘昌氏は、安倍首相に「あなたは経済オンチだ」と正論を吐き、完全に干された過去がある。安倍首相に付き従う榊原氏は、経済財政諮問会議のメンバーに復帰。政府が連発する有識者会議の常連となったが、これはとりもなおさず安倍首相が「イエスマン」だけをメンバーに選んだからにすぎない。

 法人税の実効税率を34.62%から29.74%へと大幅に引き下げさせたことは、榊原氏の手柄といえるかもしれない。これによって、日本企業の国際競争力は高まったという側面はある。

中西宏明・新会長は「政権に物申す会長になる」と宣言

 英国の原発事業を“人質”に取られている中西宏明氏はどうだろうか。

 経団連は5月31日、定時総会を開き、第14代会長に日立製作所の中西宏明会長を選任した。任期は2期4年。榊原氏ほどひどくないだろうが、経団連会長が“財界総理”と呼ばれた頃の力を取り戻すことはないとの意見が大勢を占める。時代が違ううえ、政治献金が振り込みになった影響を指摘する向きもある。風呂敷に包んだ現ナマを直接、政治家に渡さなければ迫力に欠ける。

 中西氏は「時として政府・与党に対し忌憚(きたん)なく物申す『提案型』会長で職責を果たしたい」と抱負を述べた。協調路線は維持しながらも、安倍政権に苦言を呈す「是々非々」の姿勢を示した。

 さらに、「国だけで国際関係がつくれる時代ではない」と指摘。「これまでとは次元の異なる民間外交を通じ国際社会での発信力、発言力を高めたい」とした。

 総会後の記者会見で中西氏は「賃金は労使で決めるもの。成果を出した人が報われる仕組みをもっと議論したい」と持論を展開。5年続いた「官製春闘」への距離感を滲ませた。

 会長に就任する前から、安倍首相が2018年春闘で求めた3%の賃上げ率に対して「本質的な賃上げを議論せずに、(政権から賃上げ目標の)数字がポッと出てくることには違和感がある」と述べてきた。働き手の意欲につながる賃上げが必要だと考えている。

 政府が賃上げを主導する官製春闘に対する経団連のスタンスが変わるかが注目点だ。

“安倍人事”に懸念事項

 国際協力銀行の総裁に、前田匡史副総裁が6月末に昇格する。同氏は、安倍内閣が成長戦略に掲げるインフラ(社会基盤)輸出の“旗振り役”となっている。前田氏の総裁就任により、JR東海の新幹線やリニア新幹線、原子力発電所など海外の大型案件の受注が加速する。協力銀が多額の融資を行うためだ。

 だが、おそらく前田氏が総裁を辞めた後には、こうしたプラント輸出の巨額のツケ(赤字)を税金で穴埋めする事態になることが懸念される。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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