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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

悲鳴を上げる日本の家計…食品も電気代も値上げ&賃金上がらず、消費低迷が深刻化

文=加谷珪一/経済評論家
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悲鳴を上げる日本の家計…食品も電気代も値上げ&賃金上がらず、消費低迷が深刻化の画像1「Gettyimages」より

 日本の消費が厳しい状況となっている。賃金が上がらないことに加え、4月には多くの製品やサービスで値上げが実施されたことから、消費者が一気に節約モードに入っている。

 スーパーなど小売店のなかには、値下げに踏み切るところが増えており、一部からは脱デフレに逆行するとの声も聞かれる。だが小売店が値下げをするからデフレになるという話は順序が逆であり、消費が弱いことが値下げの原因であり、それがデフレを引き起こしている。消費を回復させる政策を実施しなければ、脱デフレは実現できないだろう。

今年に入ってさらに消費が低迷

 
 総務省が6月5日に発表した家計調査によると、4月時点における実質消費支出(2人以上の世帯)は前年同月比マイナス1.3%の大幅な減少となった。消費支出がマイナスになるのはこれで3カ月連続である。

 夏のボーナス前はやりくりが厳しくなるので、支出は抑制気味となることも多いのだが、昨年はプラスを維持する月が多かったことを考えると、今年に入って消費が大きく落ち込んだことは間違いない。

 消費が抑制された理由ははっきりしている。収入が伸びないなかで物価が上昇したことで、実質的な購買力が低下したからである。特に今年の4月は多くの商品やサービスで値上げが実施され、これが消費者心理をさらに悪化させた。

 減少した割合が高かったのは、光熱費(-5.6%)、教養娯楽(-3.8%)、衣類など(-2.5%)、交通費や通信費(-1.2%)となっている。消費の最後の砦となっている食費も0.8%のマイナスである。

 通常、家計が苦しくなって支出を抑制する場合、交際費など必要不可欠ではないものからカットしていく。次は、買い換えサイクルが長く、急に使えなくなるリスクが少ない衣類などが対象となる。教養娯楽や衣類の減少率が高かったことを考えると、なんとか家計をやりくりしようとしている姿が想像できる。

 一般的に食費や光熱費のカットは最後の最後だが、4月には食費や光熱費のマイナスも目立った。その理由は4月に多くの食品で値上げが実施されたからである。

ステルス値上げはもう限界

 
 電力会社とガス会社各社は、原油価格の値上がりなどを受けて今年に入って連続で値上げを実施している。値上げの話は何度も報道されているので、各家庭では省エネを強化した可能性が高い。また昨年のヤマト運輸の値上げに続いて、今年は日本郵政がゆうパックの値上げに踏み切っており、これもジワジワと家計を圧迫しつつある。

 食品の値上げは昨年から続いているが、各メーカーは価格を据え置いて内容量を減らすという、いわゆる「ステルス値上げ」でなんとか誤魔化してきた。しかし今年に入って原材料価格の値上げがさらに進み、価格の据え置きが難しくなっている。4月に入ってインスタントコーヒーやビール、小麦粉、冷凍食品、菓子類など多くの食品が軒並み値上げとなり、これが消費を直撃した。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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