国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェット(MRJ)を開発する三菱航空機(愛知県豊山町)は7月17日、英国で開かれた世界最大級の航空展示会「ファンボロー国際航空ショー2018」で予定されていた2回目のデモ飛行を中止した。16日のデモ飛行後、機体にけん引車が接触し、機首の一部が損傷したからだ。
MRJは16日、性能をアピールするデモ飛行を同国際航空ショーで実施した。約10分間飛行し、成功を収めた。
2020年半ばの1号機納期まであと2年。リージョナルジェット(RJ)市場に参入するための離陸態勢に入る。最終日となる18日、ようやく2回目のデモ飛行にこぎ着けたが、ファンボロー国際航空ショーの商談期間(16~20日)中、MRJの新規受注はゼロだった。17年のパリ航空ショーに続いて、2年連続で新規受注はゼロに終わった。
そんなMRJを尻目に、世界の航空機市場では再編の動きが急速に進んでいる。世界航空機2大メーカーの欧州エアバスと米ボーイングが相次いで小型旅客機事業に本格参入する方針を表明。MRJの先行きに暗い影を落とした。
エアバスは7月1日、小型機世界1位のカナダのボンバルディアの小型機、Cシリーズ(100~150席)を手がける会社に50.01%出資し、傘下に収めた。Cシリーズは「A220」に名称を変更した。
一方、ボーイングは7月5日、世界2位のブラジルのエンブラエルの小型旅客機事業を買収することで合意した。80~150席の小型機「Eジェット」を持つエンブラエルの事業を切り離し、19年末までにボーイング主導でつくる共同出資会社に移管する。
150席以下の小型機市場では、ボンバルディアとエンブラエルが合わせて世界シェアの8割を握ってきた。小型機はアジアのLCC(格安航空会社)を中心に需要増が見込めるとあって、中大型機で覇権争いを繰り広げているエアバスとボーイングが取り込みを急ぐ構図だ。
MRJのライバルであるボンバルディアとエンブラエルは、大手の傘下に入った。MRJは座席数88席の「MRJ90」と、76席の「MRJ70」の2つの機種で構成しているだけに、エアバス=ボンバルディア、ボーイング=エンブラエルの2強ともろに激突する。
ボーイングはMRJの補修部品の調達などのサービスを支援しており、三菱航空機の親会社である三菱重工業とは民間航空機分野で提携関係にある。