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なぜセイコーマートだけがコンビニのなかで「レジ袋無料」を継続できているのか?

文=編集部
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セイコーマートの店舗(「Wikipedia」より)

 7月1日からコンビニエンスストアを含めた全小売業でレジ袋の有料化が始まった。プラスチックごみ削減等の課題を解決するための制度。すべての事業者はプラスチック製の買い物袋を有料化することを義務付けられた。紙袋、布の袋、持ち手のない袋は対象外で、環境にやさしいとされる植物由来のバイオマス素材を25%以上配合した袋も対象外となる。

 コンビニ大手ではセブン-イレブン・ジャパンは小・中・大と弁当用の4種類をそれぞれ税抜きで3円、特大サイズを5円に設定。ローソンはSサイズとLサイズ、弁当用の3種類の袋を税込み3円で販売。ファミリーマートも大きさを問わず3円で販売している。

 コンビニ大手3社が足並みをそろえるなか、有料と無料のコンビニが混在する地域がある。セコマ(札幌市)が運営するセイコーマートの北海道だ。セコマは道内で1078店、茨城・埼玉両県で92店を展開している。北海道をホームグラウンドとして、大手コンビニの店舗数を凌駕している。

 セコマはセイコーマートなどセコマグループ小売店1224店で7月1日以降もレジ袋の無料提供を続けている。7月1日からセコマグループではレジ袋をバイオマス素材30%配合のものに切り替えた。経済産業省が「プラスチック製買物袋有料化制度」において、有料化の対象外としている「バイオマス素材の配合率が25%以上のもの」に該当する。当初はレジ袋を有料化する方針だったが、「コロナ禍で景気が冷え込むなかで、消費者の負担を増やすことは避けるべきだ」と判断、有料化を延期した。今後、有料化の時期や価格については慎重に検討するとしている。もともとマイバッグ持参を呼びかけており、この呼びかけは今後も継続する。

 道内の小売り大手の幹部はセコマのレジ袋の無料について、「影響はほとんどない」とコメントしているが、はたしてそうなのか。セコマは加工食品や惣菜、菓子、飲料など北海道産を素材としたRB(リテ―ルブランド)に強みがある食品スーパー型コンビニ。スーパーではなくセコマで食品を購入する人も多い。実は大手コンビニもセイコーマートと競合する地域で、レジ袋の無料配布が客足にどう影響を与えているかに神経をとがらせている。

 客や店員に混乱もみられる。レジ袋が必要かと尋ねる会話が新型コロナの感染リスクを増やすし、客が購入した品物をマイバッグに詰める間、待つ人の列は渋滞する。手に持てる分しか買わない客も増え、コンビニの売上減の一因になっているとの指摘もある。

吉野家やケンタッキーはレジ袋を無料、百貨店各社は紙袋を有料

 セイコーマートがレジ袋無料で客足を伸ばせば、消費者を呼び込むためにレジ袋の無料配布にカジを切る食品スーパーやドラッグストアなどが全国各地で出てくる可能性がある。ドラッグストアのなかにも、公表はしていないが、無料のままのところもある。

 外食業では牛丼チェーンの吉野家や日本ケンタッキー・フライド・チキンはバイオマスを25%以上配合したレジ袋の無料提供を続けている。商品の牛丼やフライドチキンは紙袋やマイバッグに入れると汁や油が沁みだして持ち帰りに適さないための措置。バイオマス配合のレジ袋はコストがかかるが今後も有料化する予定はないという。

 百貨店では、プラスチック製レジ袋の有料化に伴い、買い物袋を有料化した。三越伊勢丹は食品フロアのみ紙袋を有料化(小30円、大50円)。高島屋は20円。大丸松坂屋はMサイズ15円、Lサイズ20円だ。紙袋は繰り返し使える利点があるが、「なんで紙袋が有料なのだ」と不満そうな客は多い。書店でも紙袋を有料にしたが、評判は良くない。

 消費者調査会社、リサーチ・アンド・イノベーション(東京・港区)は、同社が展開する家計簿アプリを通じてユーザーの男女約1万人を対象にアンケートを実施した。結果はレジ袋を購入した客は1割を下回り、袋を持参した客が6割を超えた。「有料化でレジ袋の利用が減って、エコバッグなどの活用が進んでいる」と分析している。

実質創業者の長男・赤尾洋昭氏が社長に就任

 セコマは4月1日付で丸谷智保社長(65)が代表権のある会長に、赤尾洋昭副社長(43)が社長に昇格した。11年ぶりのトップ交代である。洋昭氏は実質的にセコマを創業した故赤尾昭彦前会長(16年8月19日死去)の長男。一橋大学商学部卒。伊藤邦雄一橋大学名誉教授はゼミ時代の恩師だ。卒業後マツダに入社。04年、セイコーマート(現セコマ)に転じた。16年2月から代表権のある副社長に就いていた。

 昭彦氏は日本で初めて「コンビニをつくり出した男」と言われている。1971年、酒類卸の「丸ヨ西尾」時代に札幌に1号店をオープンさせた。セブン-イレブンの日本上陸より3年早かった。1974年2月、セイコーマートを設立。初代社長となった「丸ヨ西尾」の故・西尾長光氏の西と光の2文字が社名の由来になっている。赤尾氏は、取締役本部長に就任、コンビニ事業を仕切った。セブン&アイ・ホールディングスの創業家である伊藤家と鈴木敏文氏の関係に似ている。

 2007年、お家騒動が起きた。昭彦会長(当時)が創業者である長光氏の娘婿の田中誠社長を解任。創業家から社長が出ることはなくなった。内部が混乱する最中、昭彦会長は外部から人材を招いた。それが丸谷智保氏である。同氏は慶應義塾大学卒業後、北海道拓殖銀行に入行。拓銀破綻後はシティバンクに移り札幌支店長などを歴任した。お家騒動の真っただなかの07年、セイコーマートに入社。09年3月に、同じ拓銀出身で社長を務めていた西山政市氏の後任として社長に就任した。

 昭彦氏は早くから製造・物流・販売の一貫体制構築を進め、店内調理の「ホットシェフ」や道内各地域にある食品製造企業の子会社化を進めた。昭彦氏が撒いてきた種を開花させ、セコマモデルともいえる体制を実現させたのが丸谷会長だ。

 セコマは、都心重視やドミナント(集中)出店を是とするコンビニ大手と一線を画した独自の店舗戦略を採ってきた。大手と比べて住宅街への出店比率が高く、外出自粛による効果で減収の割合が抑えられた。食品の販売に力を入れ地域に根ざした店舗展開を進めてきた戦略がコロナ時代に真価を発揮した。赤尾洋昭氏の新社長としての初仕事がレジ袋無料提供の継続だった。

 プラゴミの削減効果として限定的とされるレジ袋の有料化を、コロナ禍で売り上げ不振にあえいでいる今、やる必要があったのか。レジ袋有料化のコストは消費者と流通業者が負っている。過剰包装の見直しなどと一緒にレジ袋の有料化は議論されるべきだったという指摘もある。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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