(「Thinkstock」より)
「決して荒唐無稽な数字ではない」
中国最大の半導体受託生産会社である中芯国際集成電路製造(SMIC)の関係者は胸を張る。同社は2011年から5年間に120億ドルを投じる設備投資計画をもっている。現時点での年間売上高が15億ドル前後の企業としては異例の投資額だが、背景には中国の金融機関などの強力な後押しがある。15年には50億ドルの年間売上高目標を掲げる。
中国では受託製造企業だけでなく、開発型企業もまた躍進する勢いに満ちている。たとえばスマートフォン大手の華為技術は、自社でスマホの「心臓部」となるプロセッサーの開発に成功した。携帯端末会社でプロセッサーの自社開発品を手がけるのは、世界で韓国サムスン電子とこの華為技術だけであることからも、技術力の高さをうかがわせる。
“先端技術”に懐疑的な声も
もちろん、こうした動きを眉唾モノと見る向きもある。ある国内半導体製造装置関係者は「SMICは2000年設立だが、当時も5年で100億ドルを投じ、世界最大手の台湾TSMCや二番手の台湾UMCに追いつくと公言していた。それが、今や後発の企業にも抜かれている」と、その”本当の実力”を語る。「半導体は家電のような単なる組立産業ではない。技術力が伴っていないため、受注に苦戦している」との指摘も多い。
実際、米調査会社の調べによると、11年夏時点の中国の半導体生産能力は世界の9%にすぎず、21%で首位に立つ台湾の半分以下で日本、韓国、欧州にも劣っているのが現状だ。華為技術のプロセッサーにしても、「誤作動が少なくない」(業界関係者)というありがたくないウワサがつきまとう。
海外の先進企業誘致で世界トップを狙う中国
こうしたなか、キャッチアップのため”暗躍”するのが中国政府である。海外企業勢の誘致で、先端技術を「習得」する下地づくりを急いでいるのだ。
「サムスンも韓国政府も苦渋の決断だった」と関係筋は語るのは、サムスンがスマホなどの記憶媒体に使うNAND型フラッシュメモリーの新工場を中国に建設する決定したことについてだ。約3000億円を投じて、13年下期の稼働を目指す。韓国国内では技術流出を懸念する声も少なくなかったが、スマホ組立で世界最大の生産地に成長した中国での地産地消に向け、動かざるを得なくなったかたちだ。「中国政府の強烈なラブコールがあった」(金融筋)ともいわれるが、韓国関係者の内心は穏やかではない。
すでに中国には海外大手を取り込んだ前例もある。06年、倒産の危機に瀕した韓国ハイニックス半導体を支援し、中国江蘇省にDRAM新工場を建設させた。現在、中国DRAM市場に限れば、ハイニックスが世界シェア4割超のサムスンを抑え首位に立っている。ハイニックス誘致により中国がDRAM製造技術を取り込んだことは、もはや業界関係者の常識である。