(「Thinkstock」より)
この時、旧村上ファンドのメンバーが運営する投資会社レノ(東京・港区)は18.12%を保有していたが、TOBに応募しなかった。
PGMはパチンコ大手平和の子会社で、業種の垣根を越えたえた買収劇だった。平和は2011年12月、PGMを米投資ファンドから500億円で買収した。平和の子会社となったPGMは12年11月16日から13年1月17日までの期間に、アコーディア株式の50.1%(425億円)を上限にTOBを実施していた。TOBが成立すれば全国2400のゴルフ場の1割相当を保有するガリバー企業が誕生するはずだった。もし実現すれば、現在3位のゴルフ場運営企業の6倍の規模になった。
応募が上限の50.1%に達するかに関心が集まったが、ふたを開けてみると上限どころか下限の20%にも届かなかった。PGMの完敗である。
PGMは「1月17日に悪質な情報操作があり、TOBの成否に大きな影響を与えた」として、証券取引等監視委員会に対して被疑者不詳のまま金融商品取引法に違反する事実の有無を調査するよう求めた。
これは、17日正午過ぎ、外資系通信社が「アコーディアが保有する10のゴルフ場を150億円程度で売却し、自社株買いの資金に充てる」との情報を流した件のこと。
アコーディアの株価は17日午前、8万1100円前後で推移していたが、この報道が伝わった直後に始まった午後の取引では、一時前日比3000円高の8万3800円まで急伸。PGMが発表していたTOB価格8万1000円を大幅に上回った。
TOB価格を大きく超えたため、TOBを申し込んでいた投資家は応募を取り消し、高値で売り抜けを狙っていた株主はTOBへの参加を最終的に見送った。PGMは、情報操作を仕掛けられたことでTOBが成立しなかったと主張している。
こうした泥沼化した攻防戦の最終局面で参戦してきたのが、旧村上ファンドのメンバーたちだ。1月7日付の大量保有報告書で、投資会社レノが、ほか2社と共同でアコーディア株式の13.75%を保有していることが明らかになった。レノは12年11月19日からアコーディア株式を買い始め、12月25日以降、猛烈に買い上げた。保有目的は「投資および状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為などを行う」としていた。
レノの役員はM&Aコンサルティング(村上ファンド)やMACアセットマネジメントなど、かつての村上ファンドの出身者で占められている。代表取締役は三浦恵美氏。ライブドアや村上ファンドによるニッポン放送の乗っ取り騒動のとき、村上ファンドの広報を担当していた三浦氏は美人秘書としてつとに有名だった。当時の肩書はM&Aコンサルティングの企画課長だった。
三浦氏は早稲田大学政経学部卒業で、在学中に海外留学も経験。外資系コンサルティング会社を経て、日興證券ソロモン・スミス・バーニー証券にいたとき村上世彰氏にスカウトされ、村上ファンドに入ったという。彼女は、村上氏のインサイダー事件をめぐる公判をすべて傍聴している。