レノが有名になったのは、12年10月、SBIホールディングスの大株主に浮上してからだ。保有比率は5.85%、時価にして73億6800万円を投じたことになる。レノの正体が旧村上ファンドのメンバーが結集したファンドだったことが、すぐに判明した。
そのレノが次なる標的にしたのが、PGMによるアコーディアへの敵対的TOBだ。レノは1月15日、アコーディア株式の共同保有比率を13.75%から18.12%に引き上げた。同時にアコーディアに「PGMのアコーディアに対するTOBが終了した時点で、PGMと経営統合に向けた交渉の場に着くこと。自社株取得を行うこと」を要請する書簡を送り、TOBの期限である17日の正午までに回答するよう求めた。アコーディアがイエスならこのTOBに応募しないが、ノーならTOBに応募するということだ。
アコーディアの回答はイエス。レノがTOBに応募しなかったことが、このTOBが不成立に終わった原因の1つだ。
ではこのあと、レノはどうやってアコーディア株を売り抜けようとしているのか? それが交渉条件にあった“自社株買い”である。株式を買い占めた相手の会社に、その自社株買いを要求する。これが実施される際に、それに応募して売り抜ける。これは村上ファンドが最も得意とする手法だった。今回も、この手法を採ったわけだ。
レノがアコーディアに自社株買いを要請した書簡に、次の一文がある。
『アコーディアの株式の価値は、PGMが設定したTOB価格(8万1000円)よりも、アコーディアの依頼で大和総研とPwC(プライスウォーターハウスクーパース)がDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法に基づいて算定した株式価値(大和総研は12万4632~16万3916円、PwCは10万5492~13万4944円)に近い』
PGMのTOB価格よりも、大和総研とPwCが算定した株式価値のほうがはるかに高い。TOBに応じるより、自社株買いを要求したほうが儲けは大きい。だから「自社株買いを行え」と要求した。アコーディアが自社株買いを実施すればそれに応募して高値で売り抜けるという、したたかな計算をしているわけだ。
レノは首尾よく売り抜けることができるのか。お手並み拝見である。
(文=編集部)