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IGPIパートナー塩野誠「The Critical Success Factors Vol.11」

人材のプロが新入社員へ送る「事故った時に周囲に助けられる人/見捨てられる人」

文=塩野誠/経営共創基盤 パートナー マネージングディレクター
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人材のプロが新入社員へ送る「事故った時に周囲に助けられる人/見捨てられる人」の画像1筆者・塩野誠氏

 ゴールドマン・サックス、ベイン&カンパニーなどの複数の外資系金融機関やコンサルティング会社を経て、ライブドア時代にはあのニッポン放送買収を担当し、ライブドア証券副社長に就任。現在は、経営共創基盤(IGPI)でパートナー/マネージングディレクターとして企業の事業開発、危機管理、M&Aアドバイザリーに従事するのが、塩野誠氏である。そんな塩野氏が、ビジネスのインフォメーション(情報)をインサイト(洞察)に変えるプロの視点を提供する。

 春の陽気の中、就活生や新入社員とおぼしき人たちを見ていろいろと考えます。筆者は採用も担当していますし、キャリア相談のような連載もしており、社会人前後の方々と話す機会はそれなりにありますが、今回は社会に出て少し経った“おっさん”からのメッセージを書いておこうと思います。なので、すでに社会でご活躍されている方は読まないでください。

 まず自分も含め、いろんなことは現場で経験しないとわからないものだと思います。よりストレートには、「痛み」を経験しないとなかなかわからないという意味です。普段はクールに装っている人でも、病気になったり、破産しそうになったり、逮捕されそうになったりするとだいたい慌てるものです。やはり、自分の身に何か降りかかってはじめて、色々なことが理解できます。

 新卒採用で面接をしていて、「どんなところ志望してるの?」と聞くと、かなりの頻度で、あまりその人に向いてなさそうな職種が返ってきます。学生のほうが自分のことをわかっていると思うことは、かなりレアです。しかし、大人である筆者はそんなに優しくないので「そうなんですか、がんばってください!」と答えます。こういうのは本人が就職して、向き不向きに気がつかないとなかなかわからないというのが最近の結論です。

 筆者は職業柄、それなりに多くの業種を見ていますが、キャラ的に業界に合わなそうな学生が「商社第一志望です!」とか「マスコミを目指しています!」という場面にはよく遭遇します。こうしたミスマッチはよくありますが、今ではしょうがないかなと思っています。ソーシャルメディアではどんな会社の内部情報も探せば出てくる中で、まだまだ学生のほうに勘違いやミスマッチがあるのは不思議です。

 これだけ不確実性の高まった世の中では、一生同じ会社に勤めることも少ないでしょうし、就職して自分なりにがんばって、それでも向いてないと気がついたら辞めましょう。社会に出たら誰も自分の心や体の健康を守ってくれる人はいません、自分を守れるのは自分だけです。

 会社に入ってしまった新入社員の方々へのメッセージですが、まずはしっかり周りを観察しましょう。大きくても小さくても「組織」というものの観察は面白いものです。そのうち気づくと思いますが、有名企業、一流とされる企業でも色々と適当で不思議なことがあります。例えば、大学だったら1年生と3年生ではかなりの違いがあると思いますが、会社に入ったら学校のように数年で終わるわけではなく、数十年の期間での生活になります。上司たちが「それはもうちょっと時間をかけて考えてみよう」と言って何も起こらずに時が流れても、時が流れること自体に意味があって、「時が流れたからそろそろ決めよう」なんてことが起きます。学生時代は数カ月ごとに変化があったかもしれませんが、仕事では半年、数年がかりの案件があったりするのが普通です。

 新入社員のみなさんが会社という組織を観察していると、不思議なことがたくさんあるかもしれませんが、物事には原因や個人のインセンティブがあるものです。AさんとBさんが社内ですれ違って挨拶もしないのは、過去の案件で何かあったせいでしょうし、Aさんが「あいつには困ったもんだよ」と部下を批判するのは、部下のほうがAさんよりずっと優秀なせいかもしれません。そうこうしていると、意外と会社での月日は流れていってしまい、気づいたら筆者のように“おっさん”になってしまっている場合もしばしばあります。

仕事に没頭できる期間は結構少ない?

 ひとつ言えるのは、「死ぬほど仕事ができる期間は意外と短い」ということです。「死ぬほど勉強ができるような期間は意外と短い」でもいいでしょう。つまり体力、気力、そして素直さもあって、仕事に没頭できるような期間は短いものです。体力は30代くらいからどんどん落ちていきますし、下手なプライドや贅肉はどんどんついていきます。30歳過ぎくらいから結婚や家族のケアといったライフイベントも始まることでしょう。そうすると、仕事や、仕事に必要な勉強に没頭できる期間は結構ありません。気づいた時には遅いので申し上げておきます。

 ビジネスパーソンとして成功した50代くらいの方でも、「仕事のネタは35歳くらいまでにつくったもので、あとは余韻で食っているようなもの」と言ったりします。やはりきちんとしたOSの上でないとアプリは動かないものです。仕事の仕方の基礎づくりは重要です。成功していない人の場合は「この道20年やってるからよ」と言って、同じ1年間を20回繰り返している場合もあります。

 みなさんがそれなりに価値のある仕事をしていき、何回か来る勝負の時に勝ちたいのであれば、時間の使える社会人初期は念の為がんばったほうが良いでしょう。昔の志士たちのように「自分が眠ったら国が遅れる」と思いましょう、とまでは言いませんが、頼まれた仕事に対して「えぇ、やんないとダメですかぁ」とか返事するのはやめましょう。

 逆に「意識高い系」で仕事の意味やら意義やら、自己の成長をつきつめていくタイプの人もいるかと思いますが、普通の会社であまりつきつめると疲れますのでやめましょう。仕事は何のためにしているかというと、私見ですが、食べていくためだと思います。

 子供でも知っているようなことを言いますが、体力と気力があるうちに目の前の仕事をプロフェッショナルとしてがんばるのが良いです。ほかには、礼儀や遅刻しないといった普段の行いは重要です。礼儀の悪さが知らぬ間に誰かの怒りを買っていることはよくありますし、大人なので誰も注意もしてくれないものです。人の話を聞かずにスマホをいじっていることに年配の偉い人はご立腹かもしれません。でも偉い人はその場で言わないで、後で「あいつはなんだ」と言っていることも多いです。

 そして事件が起きた時に、普段の行いが効いてきます。横領でもセクハラでもなんでもですが、事件が起きた時に「あの人ならやりそうだよねー」と言われるか「あの人は絶対にそんな人じゃないっ」と言われるかで人生違ってきます。社内の調査でも法廷でも一緒です。普段から少しずつ恨みを買っている人は、事故った時にメッタ打ちに遭うものです。礼儀やきちんとした行いは自分を守ります。礼儀よく一所懸命やっていれば、平和な日本では拾う神があるものです。

 それでは若いみなさまがリラックスした楽しい社会人になれますように。
(文=塩野誠/経営共創基盤 パートナー マネージングディレクター)

※本稿は筆者個人の意見であり、所属する団体等の見解ではないことをご了承ください。

塩野誠

塩野誠

経営共創基盤 パートナー/マネージングディレクター

ゴールドマン・サックス証券を経て、評価サイト会社を起業、戦略系コンサルティング会社のベイン&カンパニーを経た後、ライブドアにてベンチャーキャピタル業務・M&Aを担当し、ライブドア証券取締役副社長に就任。現在は経営共創基盤(IGPI)にて大企業からスタートアップまで、テクノロジーセクターの事業開発、M&Aアドバイザリーに従事。著書に『プロ脳のつくり方』(ダイヤモンド社)、『リアルスタートアップ』(集英社)がある。慶応義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。

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