(「Wikipedia」より/0607crp)
NTTドコモが4月26日に発表した2013年3月期連結決算の営業利益は、前期比4%減の8371億円だった。この営業減益要因となったのが、顧客流出を食い止めるための販促費増加だった。
13年3月期、流出食い止めのため代理店へ支払ったドコモ端末値引き販売補填費やキャンペーン費用などの販促費は、前期比6%増の1兆1617億円という巨額に上った。それでも、キャリア(携帯電話会社)を乗り換えられるMNP(番号持ち運び制度)の年間累計は140万9500件の転出超過(マイナス)と過去最悪。
ちなみに、競合のKDDIは101万500件、ソフトバンクは41万1200件と、共に転入超過(プラス)で、ドコモの「一人負け」が露わになった。
【携帯電話のキャリア別累計契約数(12年度)】
ドコモ 6153万6000件 (46.7%)
KDDI 3770万9300件 (28.6%)
ソフトバンク 3247万9600件 (24.7%)
【携帯電話のキャリア別累計純増数(12年度)】
ドコモ 41万7400件 (26.3%)
KDDI 51万1900件 (32.2%)
ソフトバンク 66万700件 (41.5%)
※「電気通信事業者協会HP」-「携帯電話・PHS契約数」-「事業者別契約数」より
その結果、新規契約数から解約数を引いた純増数(12年度累計、電気通信事業者協会統計)ではソフトバンクが66万700件、KDDIが51万1900件、ドコモ41万7400件で、累計純増数でもドコモの負けっぷりが際立っている。
今やドコモは、KDDIとソフトバンクの草刈り場の様相を呈していると言っても過言ではない。
●ドコモをさらに追い込むKDDI
ドコモの惨憺たる状況について、業界関係者は、「市場で人気の高い米アップルのスマホ『iPhone』販売にKDDIもソフトバンクも参入しているのに、ドコモは参入しておらず、ユーザが寄り付かない。逃げるのは当然」と解説する。
そんな弱り目のドコモを、さらに追い込むかのような動きを見せているのがKDDIだ。
同社は現在、iPhoneを最新機種へ買い替える場合の旧機種下取りを行うために、古物商の許可申請を各都道府県で進めており、au販売代理店も同社の指示で同様の準備をしているといわれている。
この下取りサービス開始を予定しているのが、今年夏の新機種「iPhone 5S」発売日ともいわれている。下取りの目的は言うまでもなく、ドコモ駆逐だ。「ドコモユーザが、KDDIのiPhoneを買いやすくするための誘導策だ」とKDDI関係者は明かす。
KDDIがiPhone販売に参入したのは11年9月。それまでは、08年から国内でiPhoneの独占販売状態だったソフトバンクへのユーザ流出が続き、ドコモと共に「スマホの草刈り場」と化していた。だがiPhone販売開始でユーザ流出が止まり、今度はドコモユーザがKDDIに流入するようになった。
その結果、契約純増数は11年10月から今年3月まで18カ月連続でトップを維持している。
そんな「iPhone神通力」もあり、業界では「ドコモがいつiPhone販売に参入するのか」が目下の話題になっている。参入しないと「ドコモの一人負けが今後も続くのは明らか」(業界関係者)だからだ。
ところが、この話を追ってゆくと、iPhoneに参入したくても参入できない、ドコモの立ち往生状態が見えてきた。