ユニクロ、過去最高益でも憂鬱のワケ…採算悪化続く国内事業と、値下げ販売のジレンマ
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「Wikipedia」より
同日付時事通信記事によれば、ユニクロブランドは中国や台湾、韓国などを中心に海外進出が加速し、今年5月末時点で海外店舗数は410店と、前年同月末に比べて135店増加。既存店の好調に加え、出店による増収効果が増収増益に結びついたようだ。
同日付の日本経済新聞電子版でも、好調のアジア事業について、ファーストリテイリング最高財務責任者(CFO)・岡崎健氏の「知名度が高まり、出店すればするほど利益が出る」というコメントを紹介。ユニクロは6月にはインドネシアに進出したが、隣国のシンガポールでもすでに有名なため、楽しみにしていた顧客が多かったという。また、巨大市場である中国経済の減速懸念について問われると、「(ユニクロ製品は)生活に密着した使われ方をしている。景気が悪くなったから買わない、ということはない」と自信を見せた。
海外事業の成功で柳井正会長兼社長が目標として掲げてきた「売上高1兆円」の突破も視野に入ってきたが、「そう順調ではない」との見方も広がっている。
13年3月~5月、直近3カ月の第3四半期だけを見ると、売上高が前年同期比24%増の2709億円となった一方で、営業利益は同0.7%減の273億円にとどまっているからだ。7月12日付東洋経済オンライン記事で指摘されているように、「この要因を探ると、グループ売上高の約6割を稼ぐ国内ユニクロ事業の採算悪化に行き着く」。ここ数年、国内では客数の減少が続き、国内ユニクロ事業は前年度までに2期連続で既存店売上高が前年割れ、連続減益と収益力の低下が続いている。
同記事では、ユニクロが集客の起爆剤としてスタートした「4日連続セール」に注目。12年秋から、従来行っていた毎週土・日のセールを金・月も含む4日間に拡大し、一層の低価格路線を打ち出した結果、どうなったか。12年9月から13年5月までの累計で客数は前年同期比9.1%増と大幅に伸び、既存店売上高も同5.2%増と反発したが、大規模な値引き販売で商品販売の儲けが減り、広告宣伝や什器の入れ替えなどの費用が利益を圧迫することに。そして国内ユニクロ事業は、同4.7%の減益となった。
このことが市場に嫌気されたのか、7月12日の東京株式市場では、ファーストリテイリングの株価が大幅に下落。前日終値の3万8700円に対し、終値は2250円安(5.8%下落)の3万6450円に。7月12日付SankeiBizの記事によれば、「同社株は日経平均株価への影響力が大きく、この銘柄だけで日経平均株価を100円ほど引き下げる場面もあった」という。
ユニクロと同様、海外進出を加速させる低価格衣料ブランド「ジーユー(GU)」の伸びもあり、業績は好調といっていいファーストリテイリングだが、14年春に予定された消費増税について、柳井社長は実質値引きとなる価格の据え置きを表明しており、「来年度の国内ユニクロ事業は、今よりも儲けにくくなる可能性がある」(前出の東洋経済オンライン記事)という。噴出している「ブラック企業」との批判によるイメージダウンへの対処も含め、国内事業をどう建て直すか–過去最高の連結決算とは裏腹に、ファーストリテイリングの悩みは尽きないようだ。
(文=blueprint)