皆さんは、今春に放送されたドラマ『ラスト・シンデレラ』(フジテレビ系)をご覧になっただろうか。その中で、篠原涼子さん演じる“アラフォー独女”遠山桜(39)が、自分の顎にヒゲが生えていることに気付いてショックを受ける、というシーンがあった。
『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ系列)などでおなじみ、世代・トレンド評論家の牛窪恵氏は、「アラフォー独女の体が『オス化』していることによるもので、こういう症状を訴える女性は増えている」と指摘する。
その牛窪氏が、シティリビング(サンケイリビング新聞社)と「OLマーケット研究会」を結成、1年以上にわたって取材してきたアラフォー独女の本音や葛藤をまとめた『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)が7月24日に発売され、話題を呼んでいる。
そこで、「『オス化』自認派の女子が7割前後いる」と語る牛窪氏に、
・アラフォー独女の特徴とは
・アラフォー独女が注目されている理由
・アラフォー独女は本音ではどうしたいのか
などについて聞いた。
●アラフォー独女とは
――『アラフォー独女あるある!図鑑』を書かれたきっかけについて教えてください。
牛窪恵氏(以下、牛窪) “アラフォー”とは、アラウンド・フォーティー(around 40)、40歳前後(35~44歳)の女性を指す言葉として用いられ、2008年の流行語大賞に選ばれました。これほどアラフォーが流行したのは、女性にとって40歳前後は、結婚、出産、仕事についてある決断をしなければならない特別な時期というニュアンスが含まれているからではないでしょうか。つまり、出産がぎりぎりの年齢、「妊娠崖っぷち年齢」だから。「産むか産まないか」すごく悩むわけです。
そして、「不況だし、また大地震が起こるかもしれないし、ビッグダディのように子だくさんの人もいるから別に私が産む必要はない」などと、自分を納得させるための理由をたくさん列挙したりします。本当は産みたいにもかかわらず。こういう気持ち、女性の皆さんはきっと共感できるはずです。
今、まさにこのアラフォーゾーンにいるのが、団塊ジュニア世代(1971~76年生まれ)とバブル世代(1966~70年生まれ)の2つの世代です。団塊ジュニア世代は、人口が特に多いこともあって、マーケティングやビジネスの観点から、どういう特徴を持っているのか、非常に興味がありました。でも、その実態がよくつかめませんでした。例えば、「この世代はあまり物を買わない」といわれていますが、それはお金を使うことが嫌いなのか、それとも堅実だからなのか。そこで、シティリビングの「OLマーケット研究会」と共に、団塊ジュニア世代を中心に調査を進めてきました。
この本は、その調査から見えてきたアラフォーならではの特徴をまとめたものです。バブル世代は経済がかろうじて右肩上がりの時代に入社。でも団塊ジュニア世代は就職氷河期に当たり「ビンボーくじ世代」とも呼ばれます。どちらも男女雇用機会均等法の下で仕事を続け、今アラフォーとして人生の岐路に立っている。彼女たちが何を考えているのか、身の回りの人と比較してわかってもらえるのではないでしょうか。それに、職場での彼女たちの行動についてもたくさん紹介しているので、男性にも共感していただける部分が多いと思います。例えば、「ホッとする場所」。彼女たちはLINEやモテ服の話は疲れる。それよりも、おじさんと野球の話をしたほうが気楽で、ホッとするんです。
――現在のアラフォーには、どのような特徴があるのでしょうか
牛窪 まず、独身者が非常に多いですね。国勢調査(10年)によれば、アラフォー女子の3.5人に1人が独身です。しかも年収の多い方ほど、結婚していない傾向がある。男性は、この年齢で結婚していないと「男として一人前ではない」というようなことを周りから言われ、自分でもそういう意識を持つもの。一方で彼女たちは、毎日の生活にある程度満足しており、「一生独身だとしても、それでもいいかな」と、いい意味で開き直っているところもあります。
それから、現アラフォーは、型にはまらないことが良いこととされて育ってきたので、言われてもその通りにはやらないという、ある種の意地のようなものを持っている人が多いです。だから、「女性手帳 」の配布(※編注:2013年5月、若い女性向けに、妊娠・出産に関する身体メカニズムの啓発のために配布が検討されたが、女性団体などの猛反発で断念)にしても、「そういうことは、お上に言われることではない」「自由にさせてくれ」と言っています。「私たちは、もう間に合わないかも、なのに」という悔しさも、私を含め、若干持っているとは思いますが。
でも、現20代のゆとり世代は「女性手帳」についても、それほどの抵抗感はないようですし、そもそも職場の働き方でも、「マニュアルに従って、その通りにやったほうが楽でいい」という感覚です。そういう意識も、仕事に対する姿勢の違いとして出てしまうわけです。
なぜ独身なのか
――アラフォー女子の3.5人に1人が独身なのは、どうしてですか?
牛窪 現アラフォーの女性たちは、就職直後の97年に男女雇用機会均等法が改正され、採用・昇進などで男女差をつけることが全面的に禁止された世代。寿退社するよりも、男性と対等な立場で仕事することを選択する人が増えました。その彼女たちも、「40歳になるくらいまでには産まないと、産めなくなるかも」とは思いながら、「いい人がいなければ、まだいいか」と結婚・出産を先延ばしにしてきた。この世代にはそういう方が多いのです。
結婚相手については、現40代半ば以上の女性は“三高”(高学歴、高収入、高身長)を条件に挙げましたが、現アラフォー以降は、そういう明確な条件があるわけではなく、「価値観の合う人」あるいは「私のことを認めてくれる人」というように漠然とし始め、相手を見つけるのが難しい時代に入った。それも未婚化の一因でしょう。
現20代のゆとり世代女子たちは、妊娠・出産から逆算して結婚を計画的に考え、「出産したら復帰すればいい」と割り切っています。