斎藤隆裁判長は、「同社は全加盟店に一様に価格維持を指導し、原告らは『見切り販売をしたら店を続けられない』などと言われた」と認定し、「事実上の強制があり、店側の商品価格を決める権利を妨げた」との判断を示し、同社に合計約1140万円の支払いを命じた。一方、同社が会計システムを使って値下げを妨害しているなどとした原告側主張は退けた。同社は判決を不服として、上告する構えだ。
同社による値下げ販売の制限をめぐっては、2009年に公正取引委員会が、独占禁止法違反(不公正な取引方法、優越的地位の乱用)にあたるとして排除措置命令を出している。同社広報によると、これを受けて現在は廃棄損失の15%を同社が負担するルールを導入しているという。
スーパーマーケットだけではなく、百貨店の食品売り場などでも、閉店間際などに「3割引」「5割引」といったシールを貼られて弁当や総菜が売られている光景はよく見られる。もっとも、コンビニの場合は24時間営業が基本なので閉店もなく、スーパーなどと違いフランチャイズ方式が多いので単純に比べるのが難しい面もある。
とはいえ、見切り販売を制限するというセブン-イレブンの方針は、消費者から賛同を得ることは極めて困難だろう。その理由としてはまず、パワーバランスで圧倒的に加盟店に勝る同社側の強要だと見なされることだ。もうひとつの理由としては、昨今の風潮を受け、お弁当という食品が食べられることなく捨てられていくという現象そのものに嫌悪感を示す人が多いと思われる。
同社にとって、お弁当などの商品の廃棄は、現実的なレベルではなんら痛手にはならないが、見えない部分で大きなダメージとなっているのは間違いない。
●同業他社は加盟店の裁量任せ
ちなみに、同業他社の場合は「見切り販売」についてどう対応しているのだろうか? ローソン広報によると、「見切り販売も含めて、価格設定(雑誌等の再販制商品は除く)はすべて加盟店にお任せしており、店舗のレジのキーにも、あらかじめ『割引キー』が組み込まれています」とのことだった。すべて加盟店オーナーの裁量で決めることができるということだ。
また見切り品については、「見切・処分額の商品売上高に対する比率に対して、所定の負担率を乗じた合計金額の原価相当額を本部が負担いたします」とのことであり、これはローソンのウェブサイトにも明記されている。
ファミリーマート広報も「価格設定については、独立した事業主である加盟店が決めること」としているが、見切り品などの負担については行っていない。これら2社の対応というのは、消費者からすれば当然のものと受け取れるだろう。
では、なぜセブン-イレブンは、このような対応ができなかったのだろうか?
セブン-イレブンからすれば、加盟店に貸与しているブランドイメージを「見切り販売」によって失墜させたくないという考え方が根底にあったのだろうが、それにこだわるあまり、結果的にブランドイメージを自ら著しく傷つけ、失わせてしまったといえよう。この損失を金額に換算すれば、1140万円を大きく超えてしまうかもしれない。
(文=久保田雄城/メディア・アクティビスト)