冷めない“半沢直樹フィーバー”〜海外展開と続編に意欲、他局も絶賛…テレビ局の課題も
9月22日に最終回を迎えた7~9月期の連続テレビドラマ『半沢直樹』(TBS系)。最終回放送分の平均視聴率が関東地区で42.2%、関西地区では45.5%(ともにビデオリサーチ調べ)に及んだことが大きく報じられ、早くも続編や映画版での展開を望む声が上がるなど、“半沢フィーバー”はしばらく続きそうな気配だ。
28日には、朝日新聞デジタル版が、テレビ朝日とフジテレビの両社長の声を紹介した。テレビ朝日の早河洋社長は26日の定例会見で、「際だった熱を持った主人公が、既成の組織や体制に挑み、そのカタルシス(感情の解放による浄化)に視聴者が拍手する」と分析。
一方、1997年放送に放送され大ヒットした連続ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)のプロデューサーとしても知られるフジテレビの亀山千広社長は、27日の定例会見で「(民放から)時代劇がなくなった時代に、ちょんまげを結っていない気持ちいい勧善懲悪の時代劇。みえを切るシーンがあり、立ち回りまである。町娘風な半沢の妻も存在する。見事としかいいようがない」と絶賛している。
最終回、それもクライマックスとなる半沢と大和田常務が対決した取締役会のシーンで、カメラマンが画面に映り込んでしまっているのでは、とネット上などでは一部話題を呼んでいるが、否定的な意見よりも、白熱した演技を称賛する声のほうが多い。むしろ、常務の不正を暴いて“100倍返し”を達成したはずの半沢が、証券会社への出向を命じられるというラストが消化不良だとする視聴者が多く、24日付MSN産経ニュース記事によれば、放送終了から一夜明けた23日、TBSには続編を望む声が数千件寄せられたという。
また、29日付日経新聞は、『半沢直樹』の海外展開を取り上げた。10月中旬の台湾を皮切りに、アジアの国々でも放送される見通しで、TBSは「日本企業とタッグを組み、広告とセットでコンテンツを現地に売り込む斬新な手法にも挑む」という。
同紙によると、日本のコンテンツ市場は米国に次ぐ世界第2位の規模を誇るにもかかわらず、日本の地上テレビ放送の番組は、輸出金額が63億円(2010年、総務省調べ)と韓国の半分以下にとどまる。『半沢直樹』が日本のドラマが世界を席巻する起爆剤となるか、注目されるところ。「あるTBS幹部は『頭取にのぼり詰めるまで続編をやる』と明かす。同社は本ドラマをドル箱に育てる気まんまんだ」という一文に、ファンの期待も高まるところだ。
テレビやマスメディアに批判的な目を向ける人も多いネット掲示板でも、半沢フィーバーは巻き起こっており、最終回の高視聴率を受けて、
「真摯に作れば視聴者は付いてくる テレビ離れというのはつまらないから離れるだけであって局は精進せいよ」
「若者のテレビ離れ(笑) 単純につまらないもの見せ続けてきただけだったなw」
「TV局もつらい これで視聴率低下をネットのせいにできなくなった」
など、テレビ局の制作体制に疑問を呈すコメントも数多く見られる。
『家政婦のミタ』(日本テレビ系)、『あまちゃん』(NHK)、そして『半沢直樹』と、近年になかったヒットドラマが生まれている中で、「決まった時間にテレビにかじりつく」という懐かしい光景は戻ってくるのか?
テレビドラマが新たなムーブメントを起こすかどうかは、人気作の続編より、いかに魅力的な新作が生み出されるかどうかにかかっているのかもしれない。
(文=blueprint)