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ケータイの“ダイヤモンドバンド”、高まる割り当て観測、早くもキャリア間の競争激化?

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 特に利用が集中する都市部においては、マクロセルの基地局にトラフィックが集中するとパフォーマンスが急激に低下しやすく、どんなに高速な通信方式を導入してもユーザーの体感速度は改善しない。そこで、マクロセルの中に小セルの基地局を多数設置すれば、そちらにトラフィックを逃がしてユーザー1人当たりの体感速度を上げることができるわけだ。

 もちろん、単に基地局をたくさん設置しただけでは、特にセル同士の境界で基地局同士が発する電波が干渉し合い、速度が低下してしまう。そのためLTE-Advancedには、隣接する基地局同士で情報をやり取りして協調し、干渉を低減する「CoMP」など、さまざまな技術導入が進められている。

●今後注目される、小セルに適した3.5GHz帯の割り当て

 これらの技術導入によって、下り最大150Mbpsを超える高速化が見込まれているLTE-Advanced。その導入に向け、現在注目が集まっているのが、3.5GHz帯の割り当てに関する動向だ。3.5GHz帯は、LTE-Advancedなどの導入に向け、新たに割り当てが予定されている帯域。すでに今年の1月23日には総務省が、割り当てに向けたキャリア各社への公開ヒアリングも実施しており、今年中には割り当てが実施されるのでは、という話も出ている(正式な割り当て時期は未定)。

 3.5GHz帯は、携帯電話向けの周波数としては従来より非常に高い帯域となるため、主に1GHz未満の帯域を指す“プラチナバンド”と比べ直進性が強く、浸透性が低いことから遠くに飛びにくいため、広いエリアをカバーするのには向かない。だが一方で、従来の帯域と比べ制限なしで利用できる帯域が120MHz幅もあるなど空き幅が大きく、広い幅の割り当てが見込まれていることから、高速通信を実現する上では重要な帯域となる。

 さらに3.5GHz帯は、電波が遠くに飛びにくい分、近くの基地局との干渉も起こしにくい。それゆえ先に示した小セルには非常に適した帯域ともいえる。実際KDDIの常勤顧問である渡辺文夫氏は、この帯域をプラチナバンドになぞらえ“ダイヤモンドバンド”と呼称しており、プラチナバンドとダイヤモンドバンド、双方の組み合わせが質の高いネットワークを実現する上で重要だと話している。

ケータイの“ダイヤモンドバンド”、高まる割り当て観測、早くもキャリア間の競争激化?の画像2KDDIの渡辺文夫氏は、LTE-Advancedに関する技術の実証実験において、3.5GHz帯を“ダイヤモンドバンド”と表現し重要性をアピール

 この帯域は現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス(6月~ワイモバイル)の4社が割り当てを希望している。先のヒアリングでは4社とも、周波数の利用効率や海外との整合性などを考慮し、国内のLTEサービスで主流のFDD(周波数分割複信)方式ではなく、WiMAX2やAXGPなどと同じTDD(時分割複信)方式での割り当てを希望している点では、意見が一致している。だが一方で、制限なしに割り当てができる帯域が120MHz幅分なのに対し、4社とも40MHz幅分の割り当てを希望していることから、今後なんらかの調整や審査が必要になってくるだろう。

 こうしたことから、今年に入ってキャリア各社は、3.5GHz帯の周波数帯獲得を有利に進めるべく実証実験の結果を公開するなどして、実績のアピールを積極化するようになってきた。12年のプラチナバンド争奪戦や、昨年の2.5GHz帯の追加割り当てのように、獲得に向け激しい論戦が繰り広げられる可能性は高くないと見られるものの、割り当てまでしばらく、さまざまなアピール競争が繰り広げられるのは確かだろう。
(文=佐野正弘/ITライター)

BusinessJournal編集部

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