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パナソニック、テクニクス復活の意味 歴史の学びと愚直なカイゼンで目利き世代獲得なるか

文=長田貴仁/神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー、岡山商科大学教授
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パナソニック、テクニクス復活の意味 歴史の学びと愚直なカイゼンで目利き世代獲得なるかの画像1「パナソニック HP」より
 シニア世代にとっては「一大事」「時代は変わったな」、インターネット世代にとっては「どうでもいいこと」「いったいそれがどうしたの」と世代により大きく反応が異なるニュースが相次いだ。

 一つは、かつてトリオ(現JVCケンウッド)、サンスイ(山水電気)と共に「オーディオ(ステレオ)御三家」「パイ・トリ・サンスイ」の1社として賞されたパイオニアが、家庭用AV(音響・映像)機器事業の分離とディスクジョッキー(DJ)向け機器事業を売却する方針を発表し、AV機器から事実上撤退。今後はカーナビゲーションシステムなどの自動車分野に注力する方針を示したこと。

 もう一つは、パナソニックが、1965年から2010年にかけてハイファイオーディオ専用ブランドとして販売してきた「Technics(テクニクス)」を復活、14年12月の欧州市場へのハイファイオーディオシステム新製品導入を皮切りとして順次グローバルに展開する、と発表したことだ。欧州市場に投入するのは、最高レベルの音質を実現するリファレンスシステムの「R1シリーズ」(約4万ユーロ、日本円で500万円弱)と、音楽愛好家のためのプレミアムシステムと位置づける「C700シリーズ」(約4000ユーロ、同約50万円)の2シリーズ。飛び切りの高級ブランドとして再デビューする。

 オーディオ(音響)専業メーカー――。この名称を聞き、シニア世代はノスタルジックに青春時代を思い浮かべる。ネットで音楽を聴く世代にとっては「それは、いったい何」と思われる死語かもしれない。今や、自動車と並ぶ日本の基幹産業といわれた電機産業にとって、オーディオ全盛期は輝かしい青春時代であった。その中で台頭してきたのが、元祖戦後ベンチャーのソニーに続く若きオーディオ専業メーカー。まさに現在のアップルに相当するようなベンチャー企業だった。その盟主が、38年にスピーカー部品メーカーの福音商会電機製作所としてスタートし、その後オーディオ専業メーカーに変身したパイオニアである。

 これら新興企業のベンチャースピリットを既存の大手電機メーカーが模倣するかの如く、他の家電製品で使っていたブランドとは異なる独自ブランドを展開していった。その代表格がテクニクスであった。そのブランドには社名が出ておらず、独自性を強調した。自動車でいえば、トヨタ自動車の「レクサス」のようなものである。同ブランドでは自動車自体はもちろんのこと、広報・宣伝、販売店も独自色を出し、「TOYOTA」という表記を一切使っていない。パナソニックは、テクニクスの位置づけについて次のように定義している。

「『テクニクス・ブランド』は、テレビの『ビエラ』やノートPCの『タフブック』のようなサブブランドではなく、個別のブランドとして取り扱います。パナソニックが製造社となりますが、『パナソニック』ブランドは使いませんし、併記もしません。『テクニクス』ブランドを付与する製品は、高品位な音を生み出すための素材や部品の選定で当社独自の厳格なガイドラインを設け、専任の開発体制・モノづくりで社内のサウンドコミッティ(音質評価委員会)による総合的な音質評価にパスしたものが対象になります」

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