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ルネサスは本当に立ち直れるのか?

トップが次々替わるルネサスCEOに“豪腕”オムロン会長 相変わらず迷走状態は大丈夫か?

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いまだ暗中模索(「ルネサス HP」より)
 経営再建中のルネサスエレクトロニクスは会長兼最高経営責任者(CEO)にオムロンの作田久男会長(68)を充てる。作田CEOは6月末の株主総会後に就任する。

 政府系ファンド、産業革新機構によるルネサス支援が決まったのが、2012年12月10日。2月22日に赤尾泰・前社長(58)が更迭され、同じ日立製作所の半導体部門出身の鶴丸哲哉取締役(58)が社長に昇格。再生に向けて、ようやく動きだしたかに見えたが、新社長は所詮、ショートリリーフでしかなかった。革新機構が支援を決定してから5カ月後に経営再建を担うトップがようやく決まったことになる。鶴丸社長は社長兼最高執行責任者(COO)として留任するが、常務執行役員&工場長クラスの器でしかないといわれている。

 トップ人事の混乱はルネサスの迷走を象徴している。本来なら、革新機構が支援を決定した時点でトップを決めていなければならなかった。2月22日の臨時株主総会で革新機構とトヨタ自動車など製造業8社を引受先とする総額1500億円の第三者割当増資を承認した。この時、新しい強力なトップの下で再生のスタートを切るはずだった。

 だが、トップは決まらなかった。仕方なく、鶴丸氏の社内昇格でつないだ。本格的なトップ候補として元ソニーの吉岡浩副社長など有力者の起用を模索したが、人選は難航。迷走の果てに、オムロン会長の作田氏のCEO起用にこぎ着けた。

 作田氏は1968年、慶應義塾大学工学部を卒業し、立石電機(現・オムロン)に入社。エンジニアとして中央研究所に配属された。本人は営業部門への配属替えを希望し、技術のわかる営業マンの道を歩む。95年に取締役に昇格、経営戦略室長、エレクトロニクスコンポーネンツ社長を経て、03年、社長に就任した。初の創業家以外からのトップとして話題になった。

 オムロンで不採算事業の整理などに手腕を発揮した作田氏は、ルネサスが注力する自動車向け電子部品に詳しいことから白羽の矢が立ったといわれている。12年からオムロン会長を務めていたが、6月20日のオムロンの株主総会で会長を退任する。

 トップを決めるのに5カ月もかかるようでは、ルネサスの再建の道は険しいといわざるを得ない。経営の空白を見せつけたのが、13年3月期の連結決算の発表の時だった。売上高は自動車向け以外の半導体の落ち込みが響き前期比11.0%減の7857億円、本営業利益は232億円の赤字。最終赤字は前の期の626億円から大きく膨らんで1675億円となった。1万人規模の人員削減の構造改善費用に1339億円の特別損失を計上したためだ。最終赤字は10年にルネサスが発足して以来3年連続で、統合前の前身企業を含めると8年連続となる。

 14年3月期の連結業績の見通しは「中期展望を含む業績予想を策定中」(鶴丸社長)を理由に公表しなかった。革新機構などの出資完了後に公表するという。

 ルネサスが革新機構から1383億円、トヨタ自動車、日産自動車、パナソニックなど主要取引先8社から計117億円の出資を受け入れる期限は9月末。9月末までルネサスは、今期の業績予想を開示しない可能性がある。

 経営再建を担う経営トップの作田氏が正式に就任するのは6月末の株主総会。革新機構やトヨタなどが出資するのは9月末。それまでは身動きがとれない。新しい経営トップや大株主の承認を得なければならず、それまでの間、中期展望や業績見通しを封印するわけだ。

 12年夏、債務超過への転落を回避するために、当時の赤尾社長が米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に出資を要請したと報じられた際、メインユーザーのトヨタ自動車が猛反発した経緯がある。燃費や走行性能を左右するエンジンユニットに組み込む車載用マイコンのシェアはルネサスが42%で世界首位。トヨタのハイブリッド車(HV)に使われるマイコンはすべて特注品だ。

 KKRが経営権を握れば経営改善策として特注品の生産を減らし、儲けが大きい汎用品しか作らなくなる恐れがあった。トヨタはKKRへの身売りは「新車開発に支障が出かねない」と結論づけた。トヨタの要請を受けて経済産業省が巻き返しに出てKKRを排除。革新機構とトヨタなどの顧客8社が第三者割当増資を引き受けるスキームが決まった。

 革新機構はマイコンだけで再建できると判断している。大赤字の元凶であるシステムLSI(大規模集積回路)事業を切り離す考えだった。富士通、パナソニックとのシステムLSIの3社統合を予定していた。だが、トヨタなど自動車メーカーは車載向けのシステムLSI事業は温存すべきだと主張。ルネサスの内部がまとまらないため、しびれを切らした2社だけで統合を決めた。結局、ルネサスは、車載と産業機器向けは自社で生産を継続。携帯電話向けのシステムLSI事業は海外の事業者に売却することにした。

 トヨタなどの発言力があまりにも強いため、今後もルネサスは安値取引を強いられるのではないかとの懸念が強い。経営トップのなり手が、なかなか見つからなかったのは、こうした裏事情があったからだろう。トヨタに振り回されるのは嫌だ、との思いがある。

「外資から日の丸半導体を守れ」との錦の御旗の下に、経産省は巨額の公的資金を注ぎ込む。だが、ルネサスの迷走ぶりを見ていると、公的資金の注入に大きな疑問符がつく。本来なら市場から退場をしなければならないゾンビ企業の延命策に、税金を使って手を貸しているだけではないのか。

 ルネサスは正式に再スタートを切る前から前途多難である。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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