「前回のサッカーFIFA女子ワールドカップ(W杯)覇者の日本を決勝戦で破るなど、北朝鮮は今大会に照準を合わせてきました。金正恩政権がスポーツ強化部門に巨額な資金を投資しており、14競技に150人の選手を送り込みました」(現地特派記者)
北朝鮮のスポーツ強化策には政治的思惑も隠されているようだ。今年2月、ソチ五輪の選手村では、仁川大会に北朝鮮が出場するのか否かが選手たちの間でしばしば話題に上っていた。その時点ではアジアオリンピック評議会(OCA)加盟の45カ国・地域の中、参加表明をしていなかったのは北朝鮮だけ。2002年の釜山大会以降北朝鮮は参加していたが、OCAによる再三の呼び掛けにも応じようとはしなかったのだ。
北朝鮮国内の混乱、西側諸国による経済封鎖、韓国との国境付近における緊迫した軍事行動などが重なり、北朝鮮の仁川大会参加には悲観的な見方が広がっていたが、ソチ五輪の韓国選手団に帯同していたあるスポーツ組織委員は、「北朝鮮が参加を断る理由がない」と断言していた。その韓国委員が知っていたかは定かではないが、実は北朝鮮側はソチ五輪直前、韓国政府にある提案をしていたのだ。
「南北離散家族の面会が提案され、韓国政府はそれを歓迎する声明を出しました」(政治部記者)
●北朝鮮側から韓国側への申し入れ
さらに興味深いのは、北朝鮮側のその後の行動だ。昨年12月にオープンした同国の馬息嶺(マシクリョン)スキー場について「要請があれば、五輪会場として提供する用意がある」と表明したのだ。18年冬季五輪は韓国・平昌で開催されるが、雪不足や地形の問題、さらに不況が重なり、スキー場や競技施設の建設を不安視する声も多く出始めている。
「馬息嶺スキー場は金正恩第一書記の肝いりで建設され、国際大会の競技会場としても十分に使用できる施設です。韓国国内にも『南北融和路線』の名目で、一部競技会場を馬息嶺スキー場に移すべきとの意見も出ています」(前出・政治部記者)