首コリ用の商品(税込3888円)は「2WAYコンフォート」。頭からすっぽりとかぶり首回りを覆うことで、PCの長時間使用などによる首回りの疲労回復を促す。頸部には内臓や血管をコントロールする自律神経が集中しているため、繊維に織り込まれたナノプラチナなどが発する微弱な電磁波が副交感神経に働きかけ、首コリ解消などに効果的だという。最近は「昼寝」を推奨する企業が増え始めているが、この商品は顔をすっぽり覆うため昼寝用にも向いており、首コリ解消だけでなく「昼寝市場」の拡大の一翼を担うヒット商品となる可能性もある
手首・腕の疲労用「アームコンフォート」(同4860円)は手首やひじ、腕の疲労回復を促すアームウェア。ふくらはぎのむくみ用(同)は足首からひざ下までを覆う同部位に特化した商品だ。いずれも9月1日に発売を開始。特に首コリ用は販売好調で、1万枚という販売目標を掲げたが、11月下旬時点で予定を5割上回る販売実績を残しているという。疲労回復ウェア市場への関心の高さを示している数字だ。
●無名のベンチャー企業が市場を牽引
この疲労回復ウェアブームに火を付けたベネクスは、現在34歳の中村太一社長が創業した従業員17人(14年9月末現在)のベンチャー企業(本社・神奈川県厚木市)である。繊維問屋を営む家に生まれた中村は「食卓では商売の話ばかり」という環境で育ち、慶応義塾大学に通う学生時代も家族旅行で行った海外で面白そうなものを大量に仕入れ、フリーマーケットで売りさばいたりした。
大学卒業後勤務したコンサルティング会社が介護分野に参入していたため、有料老人ホームの立ち上げや現場業務を担当。そこで寝たきりの老人が悩む「床ずれ」問題に直面した。こうした老人の力になりたいと一念発起し、父親の会社の社員2人とともに、05年にベネクスを設立した。起業はしたものの「仕事がない」状況が続き、介護・福祉向け商品の販売代行で食いつなぐ日々。それでも情熱は失わなかった。「床ずれを解消する自社製品の開発を」との思いから、床ずれの原因である血行障害を治す血流改善の方法を模索する。
そんな時、話題を集めていたナノ素材に着目。素材関連会社を行脚し続け、ついにナノ素材を開発する会社が協力してくれることになり、共同研究を始めた。それから8カ月、ナノプラチナと数十種類の鉱物を一定割合で配合すると、血行促進や免疫細胞が活性化し、副交感神経に作用することで疲労回復効果が得られることを発見した。
しかし、プラチナなどを織り込んでくれる繊維工場が見つからないなど、事業はなかなかスムーズにいかない。紆余曲折を経て07年5月、ようやく床ずれ解消マット(医療系ベッドパッド)を開発し商品化したが売れない。10万円と高額だったため、消費者はまったく関心を示さなかった。仕方なく余った繊維でTシャツをつくり、介護士の疲労回復ウェアとして、ある展示会に出展した。