なぜあの製品は、標準の1.4倍の価格でもヒットしたのか?価格競争から脱出する方法
本連載では一貫して「顧客が買う理由を考え抜こう」ということを提唱している。筆者は講演でもさまざまな事例を紹介しながらこのテーマについて話をしているが、講演後の質疑応答や懇親会で、次のようなご意見をいただくことがよくある。
「『価格勝負から抜け出して、価値を創り出し、価値勝負にしよう』という話はとても共感します。しかし値引きの要請がとても強く、価格勝負からどうしても抜け出せないのが現実なのです」
そこで筆者は、こんな質問をしてみる。
「御社の商品の品質や価値は、他社と比べてそんなに変わらないのでしょうか?」
すると、次のような答えが多いのだ。
「当社の商品は、他社と比べてまったく違います。絶対の自信があります」
詳しく話をお伺いすると、ありがちな「製品中心」の考え方には陥ってはおらず、実際に消費者からの評価も高いようだ。
では、なぜ価格勝負に陥ってしまうのか。
この会社では、営業担当者の日常業務が、問屋や卸先メーカーといった取引先に会うことに忙殺されている。そして取引先の向こう側にいる最終消費者に会えていないのだ。言い換えれば、営業が最終消費者のリアルな声を把握できていない。
そのような状況で営業担当者が取引先担当者に「当社の製品は高い品質で、消費者からも支持いただいています」と言っても、十分な説得力がないのは明らかだ。そして取引先から、「ところで、これだけの量を買いますので値引きをよろしくお願いします」という価格交渉に陥ってしまう。
では、どうすればいいのか。
まず理解すべき点は、顧客には2種類いるということだ。「仲介者」と「最終消費者」だ。「仲介者」の代表例は問屋などの取引先。一方の「最終消費者」は「ユーザー」と言い換えてもよい。実際に商品の価値を提供する先は最終消費者なので、ビジネスではリアルな最終消費者のことを理解し、彼らが何を必要としているのかを学び続け、「是非欲しい」と常に支持されるような商品を育てることが必要なのだ。