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今枝昌宏「ビジネスモデル考」

日本の連合艦隊、なぜ戦力の大きい露バルチック艦隊を撃破?ビジネスモデルの本質とは

文=今枝昌宏/エミネンスLLC代表パートナー
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なぜ、ビジネスモデルが有効なのか?

 ビジネスモデルがなぜ有効なのかというと、ダイナミズムの要素を利用することによって、比較的容易に顧客を獲得し、敵を圧倒することができるからである。

 例えば、「顧客ライフサイクルマネジメント」を見てみると、顧客の加齢や成熟という、顧客側に存在するダイナミズムを利用することにより、一度つかまえた顧客と継続的に取引することができる。さらに、顧客について敵より有利な立場に立ち続けることができるため、売上規模や資源規模の問題を一応は無関係に敵に対して優位に立つことができる。

 武術の世界に「柔よく剛を制す」という言葉があるが、これはダイナミズムを利用することによって、規模や資源で上回る敵にも勝つことを表現したものである。軍事における丁字戦法も、敵の一部に対して集中的に攻撃することにより、自軍より大きな艦隊(日本の連合艦隊は、敵のバルチック艦隊より戦艦の数が少なかった)を撃破することができるというものだ。

 このように仕組み、特にダイナミズムは、市場の選択や経営資源の問題同等に、あるいは、それ以上に重要なビジネスの要素なのである。

 こう見てくると、ダイナミズムやそのパッケージ化であるビジネスモデルも、売り上げや収益性とダイレクトにつながっている問題だということがわかる。つまり、ビジネスモデルは“従来的な意味では”戦略ではないが、やはり、戦略に分類されるべきものなのだ。従来の戦略論における、見落としと呼べるものではないかと思う。

 多くの中間管理層にとって、市場におけるポジションというのは、所与の問題ではないだろうか? もちろん、与えられた市場の中のさらに細分化されたポジションを選択すると考えられるのだが、それは自社にとっての市場を制限することにもつながるため、選択すること自体が難しいということができる。

 さらに、ビジネスモデルが近年注目を浴びている大きな原因のひとつとして、そのパッケージ化されたダイナミズム、つまりパターンとしてのプロセスという特徴ゆえに、ICT(情報通信技術)と親和性が高い点が挙げられるだろう。

 インターネットやワイヤレス端末の普及を背景に、ICTはビジネスモデル実現のための重要なツールとなる。従来、市場ポジションとしての戦略とICTとの親和性は低く、その両者を扱うプロフェッショナルも別々に存在していた。ビジネスモデルを介して、戦略思考とICTがひとつにつながったという言い方ができる。

今枝昌宏

今枝昌宏

エミネンスLLC代表パートナー。京都大学大学院法学研究科、エモリー大学ビジネススクールMBA課程卒業。ジャパンエナジー(現JX)、PwCなどのコンサルティングファーム、買収ファンドであるRHJI(旧リップルウッド)などでの勤務経験を持つ。著書に『ビジネスモデルの教科書』『サービスの経営学』など、訳書に『戦略立案ハンドブック』(いずれも東洋経済新報社)がある。ご連絡は、imaeda@eminent-partners.com まで。

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