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片山修「ずたぶくろ経営論」

ホンダ、「不可能だった」航空機エンジン参入の快挙…30年の死闘で他社圧倒の性能

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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パートナー探し

 ここで、ホンダが米国で航空機エンジンの生産が可能になった背景について、触れておかなければいけない。ホンダは、1986年から航空機エンジンの開発を独自に続けてきた。「本来ならば、単独でやりたかった」というのが、藁谷氏の偽らざる本音である。

 しかし、ホンダはFAAの型式証明をめぐる細かいノウハウや、FAAの内部人脈などを持っていない。である以上、航空機エンジン業界に精通した米国企業と組まないことには、業界参入は不可能に近い。航空機産業は、米国の戦略産業である。最後の砦ともいうべき航空機産業への日本メーカー参入に強い抵抗があるのは、火を見るより明らかだった。そこで、ガードを突破するには、パートナー企業を見つけることが最善の道と考えられた。

 ましてや、ホンダが米航空機業界参入を目指していた90年代当時、自動車をめぐる貿易摩擦が大変激しかった。したがって、ホンダは独自に開発したHF118というHF120の一世代前のエンジンを携え、米国での提携先を探して奔走した。

 そのとき、ホンダエンジンに興味を示したのが、候補のひとつだったGEだ。GEは、ジャンボ機に搭載されているような大型ジェットエンジンについては世界有数のメーカーだが、ホンダが開発したHF118のような小型エンジンは保有していなかった。結婚相手としては絶好だ。それに、GEといえば、米国を代表する企業だ。提携すれば、まさに鬼に金棒だ。両社はGEホンダを設立し、HF118の機体メーカーへの売り込みを図った。ところが、結果が出なかった。

 航空機事業の機体とエンジンの関係は、自動車の車体とエンジンの関係とは大きく異なる。民間機の機体とエンジンは通常、別の企業が手掛けている。そして、エンジンメーカーは、型式証明を取得する前のいわば“ペーパーエンジン”の段階から、複数の機体メーカーに対して売り込みをかける。

 ただし、これまた自動車と違って、新しい機種が出ることが滅多にない。したがって、エンジンメーカーは、数少ないチャンスをものにしようと必死になる。機体メーカーに採用してもらうために、機体の開発費の一部まで負担し契約をとる場合さえあるという。

ダントツの性能を実現

 小型エンジン市場に新規参入を狙うGEホンダは、競合から徹底した妨害を受けた。

 ホンダとGEは難局を突破するため、HF118より競争力のある小型エンジンの開発を決断する。GEとホンダは、互いの得意とする技術を持ち寄り、新エンジンの共同開発に踏み切ったのだ。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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