製造設備の認定では、たとえば組立マニュアルが設計要求を満足しているかという点に加え、そのマニュアル通りに組み立てが行われていることを証明するため、微に入り細にわたって調べられる。
第一段階として、FAAから専門機関の監査員が工場に入り、「マニュアルのここからここまで」と指示して、実際に作業員に目の前で作業をさせる。それと同時に、作業員に、その作業の意味や目的を質問する。
第一段階で一定のレベルをクリアすると、さらにもう一度、別の機関の専門家が呼ばれ、より高度な監査が行われる。ホンダ エアロ インクの工場をチェックしたFAAの監査員は、次のように言ったという。
「私は9つの製造場所の監査を行っているが、それらと比較してホンダ エアロ インクは最高のシステムと最高の要員を備えている」
また、製造工程のシステムに関しても、「素晴らしいシステムを構築した。これは今後、業界のスタンダードになり得る」と、高く評価されたという。
製造の認定を取得後も、監査員によるチェックは、定期的に行われる。
「航空機産業は、『レギュレーテッド・インダストリー(統制産業)』といわれます。要は、法律ですべてが細かく規定されていて、それに反すると犯罪になってしまう。そういう意味で、監査が非常に厳しいのです」(藁谷氏)
また、部品に関するサプライヤー・コントロールのための制度もある。現状はFAAからサプライヤー・コントロールを承認されてるGEが認証を与えたサプライヤーから部品を購入しているが、ホンダ エアロ インクがその要求に満足すれば、自ら部品を取り寄せるサプライヤーを認定することができる。
「FAAは、われわれが『そのサプライヤーがまっとうな部品をつくれることを、いかに保証するのか』を見るのです。米国より日本の部品メーカーのほうが品質がいい場合もあります。しかしながら、FAAが要求する品質保証方法に慣れていないという事情があるので、簡単に日本から調達できないのです。われわれがこの要求に満足すれば、今後日本の部品メーカーから調達することもあり得ます」(同)
このコメントからもわかるように、HF120には日本製の部品は今のところほとんど使われていない。さらに、エンジンのメンテナンス事業を展開するためには、これまたFAAから認定を別途取得する必要がある。ホンダ エアロ インクは、目下取得作業中だ。