オーナーが建設から一括借り上げ方式による賃貸管理まで一括して依頼するような仕組みでは、オーナーとしてアパートを管理する会社に対して本来当たり前にできるべき要求が非常に言いづらい状況になってしまう。オーナーにとっては管理を委託している会社である半面、家賃を支払ってくれる借主(お客)でもあるため、強く言いにくくなる。さらに、その事業者がアパートの建設も行っているため、その建物についてはオーナーよりもよくわかっていると考えてしまい、まだ修繕の時期ではないなど反論されてしまうと言い返せなくなってしまうこともある。
ここまでの話をまとめると、土地のオーナーはうまい話に乗せられて、建築費で搾取され、修繕費を支払ってもまともなサービスを受けられず、少し古くなると入居者が入らなくなるので家賃の減額をのまざるを得なくなり、最後には借り上げ契約を解約されるということになる。
こう書いてしまうと「30年一括借り上げ保証」というものすべてが悪いもののように思えてしまうが、立地が良く、賃貸経営に適したアパートであれば、長期安定経営も可能である。
これからアパート経営を考える土地オーナーにはよくよく考えてほしいと思うが、「借り上げ」という仕組みは、入居者が入る見込みが立つときにしか成り立たない。そうでなければ、借り上げた事業者がマイナスになるわけで、利益を追求するべき企業が借り上げる意味がない。
言い方を変えれば、借り上げ契約などしなくても賃貸経営が成り立つところしか、借り上げ契約が成り立たないということになる。ただ、入居者の入れ替えなど一時的な空室時でも家賃が入る点は借り上げ契約のメリットといえるだろう。
土地オーナーは自己防衛すべき
レオパレス21とオーナーとの借り上げ契約書は残念ながら見たことはないが、同業他社のものは見たことがあり、そこでは30年という契約期間は記載されていたものの、2年に1度家賃を見直すという条文が記載されていた。つまり「30年一括借り上げ保証」とは、30年間一括してアパートを借り上げる保証をすることで、家賃の金額保証はしていないということだ。土地のオーナーには、「30年一括借り上げ保証」といっても家賃の金額が長期にわたり保証されるということではないと覚えておいてほしい。
『ガイアの夜明け』では、レオパレス21が10年間当初の家賃を保証し、その後は2年ごとに家賃を見直すという契約を結んでいるにもかかわらず、10年たたないうちにオーナーに家賃の減額を迫り、オーナーが拒否すると強制的に解約していたことを問題視している。
これからアパート経営を始めようとする方には、提案を鵜呑みにするのではなく、自らアパート経営の基本である調査、計画を検証してほしいと思う。必要であれば、第三者の専門家に相談することも検討してほしい。
今後さらに人口が減り、少子化となる時代に、相応の家賃の減額は認めるとしても、30年といった長期にわたる借り上げ契約が果たして現実味のある契約なのだろうか。個人的には、過去何度も同じようなことを繰り返してきている問題なので、「長期借り上げ保証」に関しては、国土交通省などから一定のガイドラインを示すことが必要なのではないかと思っている。
(文=小林紘士/不動産ジャーナリスト)