日本生産性本部サービス産業生産性協議会が発表する「JCSI(日本版顧客満足度指数)」。このコンビニエンスストア部門の「顧客満足」で、2年連続1位を記録しているコンビニがあることをご存じだろうか。
それは、セブン-イレブンでもなければローソンやファミリーマートでもない。北海道で生まれたご当地コンビニ「セイコーマート(以下、セコマ)」だ。セコマは「知覚価値」「推奨意向」「ロイヤルティ」でも1位となっており、このうち「知覚価値」は4年連続の1位だ。
セコマは、北海道産にこだわった独自の商品ラインナップ、店内で調理したできたての弁当、あえて全店を24時間営業にしないなど、大手3社とは一線を画した独自の戦略を採用するコンビニとして知られる。
また、これまで店舗は北海道に集中していたが(1092店舗)、近年は埼玉県に11店舗、茨城県に86店舗を展開して関東進出を図っている。そこで、「セコマのすごさ」を確かめるべく、実際に埼玉の店舗を訪れてみた。
セコマに入ると、そこは北海道だった
店舗前に着くと、まず「ここは北海道か」と思ってしまうような広大な駐車場が目に入る。そして、店内に入ると噂通り、北海道産の商品がこれでもかと並ぶ。
たとえば、環境省の名水百選に選ばれた北海道京極町の「京極の名水」、道民に愛されている清涼飲料水の「ガラナ」、さらに、北海道産の牛乳を使ったカステラ、せんべい、紅茶……。ほかにも、山わさびを使用したスナック菓子、カップラーメン、道民ならおなじみの「やきそば弁当」などが陳列されていた。ただ、これらは売れ筋商品らしく、品切れとなっている棚が多かった。
そのすぐ横には、ヨーロッパや南米などの産地から80種類以上揃えたワインコーナーがある。これらのワインは、わざわざ現地に足を運び、味と品質を吟味したものだという。しかも、1本約500円とワンコインで買えてしまうのだ。
アイスのコーナーを見て、その多さに驚いた。おそらく、種類と量は大手3社の倍以上あるに違いない。なかでも目玉商品は、北海道産のバニラソフト、メロンソフト、かぼちゃソフトだ。人気があるためか、ほかのアイスよりも多く売られていた。
その向かいの棚には惣菜コーナー。サラダ、玉子焼き、きんぴらごぼうなどのおかず系もさることながら、特筆すべきはナポリタン、カルボナーラ、ペペロンチーノ、ジャージャー麺、焼きそば、焼きうどんなどの麺類だろう。ラインナップが豊富な上に、価格はすべて100円(税別)という安さなのだ。100円とは思えないボリュームを考えると、コストパフォーマンスはかなり高い。
そして、レジ横にあるのは、セコマ独自の「ホットシェフ」だ。店内で調理した手づくりのカツ丼、豚丼、おにぎり、フライドチキンなどを販売するコーナーで、これもコンビニの常識を覆す画期的なシステムといえる。
100円パスタの圧倒的コスパを体感…
見たところ価格とボリュームは申し分ないが、味はどうだろうか。
まず、北海道限定のガラナとメロンソフトを購入してみる。見た目がコーラそっくりのガラナは、“本家”と比べてより甘みが強くコクがある。なんの味に似ているかの表現が難しいが、おいしいことは確かだ。
次に、チキンたっぷりペペロンチーノ、和風豚焼きうどん、ナポリタンスパゲティ、豚肉とキャベツの塩焼きそばを購入。100円パスタはどれもボリューム十分だが、特にお得感が高かったのが、チキンたっぷりペペロンチーノだ。
「チキンたっぷり」という商品名の通り、100円とは思えないほどジューシーなチキンが惜しみなく入っていて、パスタにもしっかりコシがある。
和風豚焼きうどん、ナポリタンスパゲティ、豚肉とキャベツの塩焼きそばも、しっかりと味付けされていて満足度が高かった。価格と量、濃いめの味付けを考えると、食欲旺盛な20代にうってつけだろう。
あるいは、まとめていくつか購入し、家族や友人とバイキングのように食べ比べするのもいいかもしれない。
北海道民の郷土愛をくすぐる、セコマの商品開発
実際に店舗を訪れてわかったのは、品揃えやコスパなどにおいて「セコマは大手3社のコンビニとは明らかに違う」ということだ。
では、専門家はセコマの強みをどう分析しているのか。コンビニ研究家の田矢信二氏によると、セコマの顧客満足度が高い理由は「北海道民の郷土愛が少なからず関係している」という。
「ブランド総合研究所が昨年調査した『郷土愛ランキング』で北海道が1位になったことでもわかるように、北海道民には地元の食べ物を愛する風土が根付いています。その点をよくわかっているセイコーマートは、北海道産にこだわった商品開発を進めている。それが、顧客満足度1位につながった大きな要因だと思います」(田矢氏)
北海道が地産地消に恵まれた土地柄であることに加え、「郷土愛ランキング」2位で同様に郷土愛が強いとされる沖縄県にはご当地コンビニがない。そのため、「セイコーマートがよりクローズアップされる傾向にある」と田矢氏は言う。
また、セコマはほかのコンビニと比べて、より重要な生活インフラとして機能している側面もあるという。
「札幌や旭川、函館などの都市部を除くと、北海道では『最寄りのスーパーまで車で1時間かかる』といった場所も珍しくありません。そうした地域の人々にとって、品揃えが豊富なセイコーマートはスーパーに近い役割を担っているともいえます。これは、既存のコンビニとは一味違う強みです」(同)
田矢氏によれば、セコマが埼玉や茨城に進出しているのは、「積極的に全国展開をしよう」と考えているわけではないという。
「北海道で成長してきましたが、積極的に全国展開する可能性は低いのではないでしょうか。なぜなら、北海道におけるコンビニ店舗数のシェアを比べると、依然としてセブン-イレブンよりセイコーマートのほうが店舗数は多く、地元人気に陰りは見えません。これまで通り、北海道民を大事にする地元密着型の商売に変わりはないと思います」(同)
セコマは、知る人ぞ知る“ご当地コンビニ”であり続ける。それは、北海道民以外の顧客にとっては、うれしいような残念なような、なんとも複雑な話だ。
いずれにせよ、北海道、そして埼玉や茨城に旅行や出張で行った際には、ぜひセコマに立ち寄ってみてほしい。その品揃えとコスパの高さに驚かされ、“インスタ映え”する商品がたくさん見つかるだろう。
(文=福田晃広/清談社)
●取材協力/田矢信二(たや・しんじ)/コンビニ研究家
セブン-イレブンとローソンでの現場経験を活かし、出店調査・顧客満足度&従業員満足度調査・インバウンド調査等に関わり、 企業講演・セミナーなどにも呼ばれる。最近では、中国企業や大手コンビニが集結したコンビニ業界特化型セミナーなどで講演。 独自の情報をブログで発信。その口コミが評判で、テレビ・ラジオなどにもメディア出演。 代表著書『ローソン流 アルバイトが商売人に育つ勉強会』。調査徹底企業の株式会社サーベイリサーチセンター所属。 2017年10月26日に、改訂版「セブンイレブンで働くとどうして『売れる人』になれるんですか?」を発売。