米小売り大手ウォルマートは、傘下の西友の売却に向けて動きだした。複数の流通大手や投資ファンドに打診している。非上場のため細かいデータはないが、西友の店舗数は335店、年間売上高は7000億円規模と推定される。国際的なM&A(合併・買収)に詳しいアナリストは、「売却額は3000~5000億円」とみている。
ウォルマートは丸ごと売りたいが、すんなりいきそうにない。流通大手といえば、まず浮かぶのがイオンとセブン&アイ・ホールディングス。両社とも総合スーパー(GMS)事業の立て直しに取り組んでおり、西友のGMSを引き取る余裕はない。「西友のシステムがウォルマート仕様になっている」(流通業者)のも難点だ。
国際M&A市場で「ドンキホーテホールディングス(HD)が名乗りを上げる」との観測が急浮上。ドンキHDの株価は7月12日、一時、前日比160円(3.0%)高の5450円まで買われ、5330円で取引を終えた。翌13日の終値は前日比90円(1.7%)高の5420円。5営業日続伸した。高値は3月16日の6380円。しかし、8月9日には一転して4990円の年初来安値に逆戻りした。
ドンキHDは業績が好調だ。ユニー・ファミリーマートホールディングスと資本・業務提携して、総合スーパーのユニーやコンビニエンスストアのファミリーマートの店舗の“ドンキ化”に取り組み、成功を収めている。すでにユニーとドンキを融合したディスカウントストア業態の6店舗をオープンした。伊藤忠商事はユニー・ファミマHDを完全子会社にするためのTOB(株式公開買い付け)を8月16日まで実施中。ドンキHDが伊藤忠と組んで西友の有力な買い手候補になるとの思惑が流通業界に広がっている。
このほかに、三菱商事・ローソン・イオンの三菱連合や楽天、国内外のファンドが買い手として取り沙汰されている。イオンのDS(ディスカウントストア)事業の現在の年商は4000億円規模。2020年にこれを2.5倍の1兆円にする高い目標を掲げている。西友はGMSからDSへの転換を進めており、イオンのDS事業強化とぴったり波長が合う。西友を手に入れればイオンのDS事業の柱となり得る。もし、イオンが動くことになれば、同社に4.64%を出資する筆頭株主の三菱商事の力を借りることになるとみられている。
かつて、イオンはウォルマートによる買収防衛策として、三菱商事を筆頭株主に迎えたという経緯がある。当時、ウォルマートは西友とイオンを経営統合させることを狙っていた。それが、イオンが西友を買収する立場になる可能性が出てきたとは運命の皮肉である。
三菱商事はコンビニ業界第3位に転落したローソンのテコ入れに躍起となっている。三菱商事の垣内威彦社長は三菱商事・ローソン・イオンの大連合で西友獲りを考えるかもしれない。