西友は、堤清二氏が率いるセゾングループが1956年に設立した「西武ストア」が母体。バブル崩壊後に財務体質が悪化し、2002年に米ウォルマートと包括提携。08年にウォルマートの完全子会社となり、店内のオペレーションから商品調達、物流などのコストを絞り込む「ウォルマート流」の手法を全面的に採用して経営の立て直しを図ってきた。競合する店舗を圧倒する低価格で来客数を増やし収益を高める「エブリデー・ロープライス(EDLP=毎日が安売り)」が西友のキャッチフレーズとなった。
西友を運営するウォルマート・ジャパン・ホールディングスは株式会社化した15年以降、2年続けて純損益が赤字。決算公告によると16年12月期は最終損益で2億4900万円の赤字だった。17年は純利益ゼロだったが、米ウォルマートが当初考えたスケールメリットを生かすどころか、業績の低迷から抜け出せないでいる。
ウォルマートのダグ・マクミロン社長兼最高経営責任者(CEO)は6月1日の年次株主総会で「集中こそが優先事項だ。商業モールなど中核的でない資産は切り離し、成長分野と技術に投資しているのはそのためだ」と述べた。4月以降、英国やブラジルでスーパー事業を縮小しており、人口減による市場縮小が不可避の日本市場からの撤退も時間の問題とみられていた。
「ウォルマートは、難航が予想されたブラジル事業の米投資ファンドへの売却を6月に決めたことで、西友も有利な条件で売却できると自信を持った。ウォルマートは複数の流通大手や総合商社、投資ファンドに西友売却の打診を始めた」(国際M&A筋)
総合商社の首脳は「住友商事が隠れ本命」と指摘する。西友は00年、食品を中心とするスーパーのサミットを運営する住友商事と資本・業務提携した。02年、住友商事の仲介により米ウォルマートの傘下に入った。西友をウォルマートに結びつけた水先案内人が住商だったわけで、「あなどってはいけない存在」(同首脳)。
中国資本や投資ファンドの動きも注視
前出・国際M&A筋は、「中国のネット関連のアリババが日本に本格進出する拠点として西友に目を付けている」と解説する。アリババが動く場合には、総合商社が一枚噛むことになろう。ウォルマートと強固な接点を持つ住友商事が本線で、三井物産もあり得るとされる。