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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

中国の航空機メーカー、世界3強入りの兆候…完成前の新型ジェット機が受注急増

文=稲垣秀夫/航空経営研究所主席研究員
中国の航空機メーカー、世界3強入りの兆候…完成前の新型ジェット機が受注急増の画像1ARJ21(「Wikipedia」より/Revent)

 カナダの総合輸送機械メーカーであるボンバルディアのリージョナルジェット(地域航空機)CS100/300の事業が、エアバスの傘下に入った。開発を終えたばかりのCS300型機は座席が多くて燃費が良く、航続距離も長いので評価が高い。ボーイングの787やエアバスのA350並みのカーボン構造というのが売りである。

 CS300は横5列の座席配置でリージョナルジェットの看板を掲げてはいるが、航続距離は十分で、その最大座席数はエアバスのA320の短胴型A319の座席数の下限に届いた。これまで狭胴機がカバーしていた路線に投入できる。これはエアバスにとっては脅威である。

 ボンバルディアとしては攻勢を仕掛けていくところだが、膨らんだ開発費が同社の負担となったようだ。この機を逃さず、カナダ政府の援助を理由にCS100/300の不当廉売を提訴していたボーイングを尻目に、エアバスがボンバルディアと提携した。これが引き金となり、リージョナルジェット分野の主たる競争相手であるブラジルのエンブラエルもボーイング傘下に入った。ボーイングとエアバスという、世界の民間航空機市場のほとんどを占める2大メーカーに対して、微力ながら競争相手になりうると思われていたボンバルディア、エンブラエルがあっさりと大手2社の軍門に降ったのだ。大手2社体制は、これでいっそう揺るぎないものとなるだろう(エアバスの傘下に入ったCS100/300はA220-100/300に名前を変えた)。

 ところが、どんなに強固に見えても思わぬ伏兵は存在する。中国やロシアのメーカーの勢いがすさまじく、新興国を中心とした民間機マーケットに喰い込みそうなのである。

すさまじい勢いの中国メーカー COMAC、3機種を同時開発

 COMACは中国の2大航空機メーカーの1社で、上海に本社を置く「中国商用飛機:Commercial Aircraft Corporation of China, Ltd」の略称である。ボーイング737サイズの狭胴機C919 、およびリージョナルジェットARJ21を独自開発し、同時にロシア企業との合弁で広胴機CR929の開発にも昨年着手した。未完成のジェット旅客機3タイプを同時に開発しているのだ。

 さらにボーイングと共同で737MAXについて塗装や試験飛行など製造の最終工程を担う工場を杭州に近い舟山開発地区に保有し、今年中には出荷を開始する予定である。このCOMACは中国政府と上海市、および「中国航空工業(AVIC)」の3者が株式の80%を保有し、上海市が主たる管理者となっている国営企業である。ホームページを見ると、その設立趣旨は中国企業として米国のボーイング社や欧州のエアバス社に比肩する民間航空機製造事業を行うというものである。

 ちなみに株主の3番目に出てくるAVICは北京に本社を置く中央政府管理の国営企業で、COMACと並ぶ中国の2大航空機メーカーの1社である。COMAC と共に2008年に国内航空機製造事業を再編し設立された、歴史の浅い企業である。中国国内で従来から航空機やその部品を製造している会社を傘下に置き、民間旅客機(輸送機)を除く軍用航空機や宇宙ロケットをはじめとする航空機の製造事業全般をグループとして担っている。

 なお、中国が天津でエアバスとの共同事業として行っているエアバスA320の組立事業は民間航空機の製造事業だが、これはAVICが実施している。COMAC がボーイング社と合弁事業を進めていることから、これと距離を置くためにAVICの傘下に置いたものと思われる。

COMAC C919 好調な販売

 COMACに関して最近注目されることは、中国の航空会社やリース会社を顧客として狭胴機C919の受注が急増していることである。昨年8月から今年2月までの6カ月間に受注残機数が185機増加し781機に上っている。ジェット旅客機の受注総機数でエアバス、ボーイングのベストセラー最新鋭機A320neo、737MAX、787、A350に続く5番目の位置にいるのである。

 C919は完成前の機種であり、前述の通りボーイングの737やエアバスのA320と同じ客席サイズのマーケットの機種である。中国企業のC919選定には中国政府の後押しもあろうが、推定機体価格が欧米2機種の半額程度とされている点は、今後の販売競争を占う上で大きなポイントとなろう。

カーボン機開発を進めるロシア企業

 次の注目点は、広胴機CR929の開発において、強化プラスチック部材の供給会社を決定したという最近のニュースである。

 CR929の開発でCOMACは胴体を分担し、ロシア側企業のユナイテッド航空機会社(UAC)は翼を分担する。それぞれが担当する部分はいずれも最新であるカーボン構造となる予定である。UACは独自開発のボーイング737クラスの狭胴機MS-21をカーボン製の翼としてすでに開発を進めており、この機体が型式証明を得てマーケットに投入されれば、狭胴機としては世界で初めてのカーボン機となり、軽量化により狭胴機の燃費はさらに改善されるだろう。ちなみにMS-21の公式価格は737やA320の約8割程度となる模様である。
(文=稲垣秀夫/航空経営研究所主席研究員)

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