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融資資料改竄のTATERUの盟友、西京銀行の内実

文=有森隆/ジャーナリスト
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融資資料改竄のTATERUの盟友、西京銀行の内実の画像1西京銀行本店(「Wikipedia」より)

 東証1部上場の不動産会社TATERUが、アパートに投資する顧客から受け取った預金残高など融資に必要な資料を改竄していたことが判明し、さらに、そのTATERUの顧客の融資の申し込みを一手に引き受けていたのが西京銀行だったとされている。

 そこで、2005年当時の取材メモをひっくり返してみた。

 山口県周南市に本店を置く第二地銀の西京銀行で、信じ難いことが起きた。西京銀行とライブドアが共同出資でインターネット専業銀行「西京ライブドア銀行」(仮称)を設立すると発表したのは05年1月24日のこと。2月中に西京銀行が51%、ライブドアの完全子会社が49%を出資して銀行設立準備会社「西京ライブドア決済企画」を東京に設立し、年内にも銀行免許を取得する段取りだった。

 ところが、ライブドアは2月9日に発表した「第一四半期業績状況(連結)」の中で、このネット銀行の設立について、「3年以内に当社が67%超となるよう拘束新株発行契約を締結」と記載した。「西京ライブドア銀行」は3年以内にライブドアの子会社になると、世間に告知したのである。これに仰天したのが西京銀行だ。同月15日に「契約締結の事実はない」とプレス発表して打ち消しに躍起になった。ライブドアの発表は2月9日。その情報が西京銀行には入らなかったのだろうか。対応が遅すぎる。

 これについて金融関係者は「銭谷美幸専務取締役東京本部長に任せっぱなしにした大橋光博頭取の責任」と、手厳しい評価を下した。銭谷専務は、邦銀初の女性役員に就き話題になった人物で、野村総合研究所、外資系投資顧問会社を経て、再就職支援会社、ヒュー・マネージメント・ジャパンに転じ、同社のジャスダック上場で主導的役割を果たした才媛である。大橋頭取がスカウトし、04年6月の株主総会でナンバー2の専務に就任した。

“銭谷プロジェクト”の第一弾はソフトバンク・インベストメントのネット証券子会社、イー・トレード証券と公開予備軍を紹介する業務で提携。企業の社会的責任(CSR)に取り組む会社に投資するCSR専用ファンドの販売を世界最大級の金融グループ、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)系の投信投資顧問会社に委託した。極め付きがライブドアと共同出資によるインターネット専業銀行の構想だった。

 大橋頭取は日本銀行OBで、釧路、広島の両支店長を経て1995年に西京銀行に入行。専務、副頭取を1年ずつ務めて97年から頭取。責任問題にどう決着をつけるのか。日銀OBの頭取の首は切れない。そうなると、スケープゴートは銭谷専務ということになる。

 金融庁は西京ライブドア銀行の免許交付に難色を示していた。「免許申請を自主的に取り下げるべき」との見解が大勢を占めるなかで、「日本振興銀行の夢よ、もう一度」という声も出始めていた。当時、金融担当大臣だった竹中平蔵氏(現慶應義塾大学名誉教授)と仲の良かった木村剛氏が申請していた日本振興銀行に免許が下りた時と同じパターンだ。「世間から批判を浴びる銀行免許は、木村・日本振興銀行だけにしたかったのに」と、金融庁首脳は頭を抱えていた。ただ、西京ライブドア銀行は関係者の思惑通りにはならなかったことを、念のため付け加えておく。

 ニッポン放送株売却やフジテレビジョンからの出資で1470億円を手にしたライブドアは早速、大手商社の双日が全額出資する商品先物取引会社、日商岩井フューチャーズを買収した。ライブドアはライブドア証券(旧・日本グローバル証券)や消費者金融のロイヤル信販を相次いで買収、金融事業を収益の柱にしたいと考えていた。ライブドアは、ニッポン放送争奪戦で得た資金のうち、最大500億円を金融事業に投入するとしていた。その“目玉”がネット専業銀行だった。
(文=有森隆/ジャーナリスト)

有森隆/ジャーナリスト

有森隆/ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

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